PostScriptイベント後記

DHイベント

公開日:2022/06/30

【開催レポート】デジタルハリウッド大学大学院「2021年度成果発表会ECHOES. DHGS the DAY」 世界を変えたい学生たちの挑戦は、どのように響き渡ったのか?

開催エリア:オンライン

イベント概要

イベント名 デジタルハリウッド大学大学院(DHGS) 2021年度成果発表会 ECHOES. DHGS the DAY
日程 2022/2/26

「世の中を変える研究成果を生み出したい」

そのように考え、行動する学生が多いことは、デジタルハリウッド大学大学院(DHGS)の 1つの特徴と言えるかもしれません。

毎年異なるテーマで開催する研究成果発表会では、本当に多種多様なテーマと切り口で社会課題の解決に挑む学生の姿を目にすることができます。

2021年度成果発表会のテーマは、「ECHOES. 」です。今回登壇する大学院生(M2・17期生)は、新型コロナウイルス感染症が拡大を始め、世界が大きな混乱に見舞われた2020年に入学した世代です。リアルな場での交流ができない中、オンラインを活用し、手探りで学びと研究を続けてきました。

今回参加したのは、主役である17期生11名と修了生10名、教職員3名の計24名。本記事では、成果発表会の様子をダイジェストでお届けします。

「ECHOES=響き渡る者たち」という愛称が付けられた17期生たちは、どのような発表を行ったのでしょうか?

学生自身の原体験をもとに開発された、2つのサービス

成果発表会は前半と後半の2部構成で実施され、17期生の発表の間には、昨年度DHGSでの学びを終えた修了生の発表が行われました。

17期生の発表でトップバッターを務めたのは、20年前からインターネット業界で起業し、活躍する原田翔太さんです。原田さんはこれまでのキャリアの中で「世界を変えるのは民主主義ではなく、たった一人の人材だ」と気がつき、次世代リーダーを育成するための教育コンテンツ制作に取り組もうと決めたのだそうです。

DHGSに入学して実際に制作したのが、動画を活用した学びのプラットフォーム『未来書店』です。

各分野の専門家や第一線で活躍する方々のさまざまな語りをプラットフォームに集約し、検索エンジンでは出てこない情報が見つかるサービスに仕上げていきたいと原田さんは語ります。

インターネットやSNSの普及でさまざまな情報が瞬時に流れていく現代において、普遍的な情報への価値を見出した原田さん。100年後の日本や世界の人たちに普遍の学びを届け、「世界を変えるたった一人」を生み出すために挑戦を続ける決意を表明し、発表を終えました。


DHGSには、原田さんのように自分の仕事や活動の中で経験した原体験をもとに、オリジナルのサービス開発に取り組む学生が多く集まっています。ノルマチケットの売買が可能なプラットフォーム『For Guest(フォーゲスト)』を開発した、藤吉香帆さんもその一人。

クリエイターとして活動しながら、趣味のダンスパフォーマンスを楽しんでいる藤吉さん。
日頃から、パフォーマーがイベントに出演する際に会場から課せられるノルマチケットを友人・知人に販売しづらく、活動の幅が狭まってしまうという課題を感じていたと言います。

藤吉さんが開発した『For Guest』は、この課題を解決するため、ノルマチケットの売買を電子化しました。さらに、観客からの投げ銭機能やパフォーマーによるオリジナルグッズの販売機能など、付加価値の高い機能を追加することで、趣味からプロ志向まで幅広い方が使いやすいサービスを目指しました。

そんな藤吉さんが見据えるのは、「超個人的多様性を楽しむ未来」です。人は社会の中でさまざまな役割を生き、その中で多様な一面を持ちながら他者との関係性を築いています。藤吉さんは開発するサービスを通じて、身近な人に自分の中のさまざまな一面を見せやすく、より豊かな人間関係を築きやすい世の中にしていきたいと考えているそうです。

今よりもさらに生きやすい社会を目指して、今後も『For Guest』によるチャレンジが続きます。

世の中を変える新たなきっかけを創りだす

日本の抱える課題の解決を目指してDHGSの門を叩いた、中央区議会議員の高橋元気さん。高橋さんは政治の世界におけるデジタル化の遅れと若者の政治離れに強い危機感を抱き、世直しシミュレーションゲームを企画・開発しました。ゲームでは選挙での投票から政策実現、街の変化までを追体験できるストーリーを設計しており、若者が政治の力を学べる内容を実現しました。

現在、世の中には政治をテーマにしたゲームはほとんどありません。法律の縛りがある上に、政治の世界を知らなければストーリーなども作り込めないため、高橋さんだからこそ作れるコンテンツとしてこれまで取り組んできたそうです。

発表のラストで高橋さんは、「政治家こそが“希望”であると信じている。政治の世界を変えていきたい」と熱弁しました。

ビジネス領域での研究や、未来を先取りした研究成果も

DHGSでは、ここまでご紹介したような自分のサービスを開発・追求するだけでなく、ビジネス領域で研究を進める学生もいます。長く企業の経営計画策定支援を行ってきた畠田拓さんも、その一人です。

畠田さんはこれまでの経験から、改めて企業が成長する要件についてDHGSで研究を重ねてきました。

畠田さんの研究では、『ものづくり補助金』と『事業再構築補助金』の公募要領を分析。
事業計画を作成する際に必要な10施策の洗い出しと整理に成功しました。企業が経営課題に向き合う上では「何に、いつ、いくら使って、何を実現するのか」という経営学の中核的概念が有効であると再認識することができました。

「自治体資料から事業計画に役立つポイントを整理した点に新規性がある」という指導教員・海老根教授のコメント動画とともに、企業の経営では当たり前のことを一つ一つしっかりと取り組んでいくことが大切だと研究成果をまとめました。


はるか未来の社会を想像して、一見すると現在の技術では難しそうな研究テーマに取り組む学生もいます。

入学試験のときから一貫して同じテーマに取り組んできた吉見正樹さんは、ITエンジニアの本業の傍らでDHGSでの研究に取り組み、6面ディスプレイをアップデートした「x空間転送装置」の開発と事業化に邁進しています。

従来の映像は「奥行き」を表現する情報を持たないため、通常のディスプレイへの投影では空間を適切に表現した映像コンテンツの実現は不可能でした。

そこで、吉見さんは360度どこから見ても映像が映るハードウェア『6面ディスプレイ』を開発。ハードウェアの普及も見据え、キラーコンテンツをつくるために、6面ディスプレイでの映像表現に対応した6面カメラも開発しました。

私たちの見ている世界を6面カメラで撮影し、6面ディスプレイで映し出すことで、空間転送が実現できると話す吉見さん。いずれはプラットフォームを構築し、フリーミアムモデルで世の中に広げていきたいと考えているそうです。

開発したハードウェアは、いつか宇宙エレベーターが実現した際、宇宙の絶景を全世界に配信できるツールとなると語り「共につくり上げましょう!」と発表を締めくくりました。

各学生が自身のテーマにぶつかり、響いた「ECHO」を確かめた成果発表会

17期生の発表前後には、昨年度の成果発表会でMVPを受賞した加茂文吉さんと園田正樹さんも発表を行い、自身が手がける事業の進捗について報告しました。

▼昨年度の研究成果発表会はこちら

すべての発表が終わった後、今年度のアワード発表が行われました。残念ながらMVP該当者はいませんでしたが、社会にインパクトを与える可能性が高い発表を行った登壇者2名に奨励賞が授与されることが決定。木原 民雄専攻長より総評をいただき、2021年度の研究成果発表会 ECHOES.  DHGS the DAYが終了しました。

■木原専攻長 総評

DHGSには毎年、80名ほどの新入生が入学します。今日は11名が登壇しましたが、本当に多様なテーマで発表が行われたと感じています。

多種多様な研究テーマを持つ学生が数多く集まるのは、DHGSの自由度が高いからです。もし、学生の研究テーマが指導教員の専門外であっても、私たちは学生を見放すことはしません。学生に伴走し、一緒に最適な研究方法を考えながら、それぞれのテーマに向かって走り続けていく2年間を過ごします。

このような学びと研究ができるのは、DHGSならではの伝統です。今日の成果発表会では、学生自身が研究テーマにぶつかってみて、響いたECHO(エコー)の形を確かめられたように思います。

今回の発表会を見てくださった方が、自分も働きながらチャレンジしてみたいと思ってもらえたら嬉しく思います。

▼成果発表会公式サイトはこちら
https://gs.dhw.ac.jp/exhibition/2021/

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