Interviewインタビュー

No.9

公開日:2017/05/06  取材日:2017/04

1児の母として、フリーランスWebデザイナーとして、子育てとのワークバランスを大切にチャレンジを続けたい

Webデザイナーフリーランス デジタルハリウッド大阪本校

No.9

Webデザイナー/フリーランス
上田 智子さん(デジタルハリウッド大阪校卒業)

デジタルハリウッド大阪校卒業生 上田 智子さん

このインタビューは2017年4月当時の内容です。

きっかけはデジハリのFacebook フリーランスデビューを決めた理由

――上田さんは2歳のお子さんを抱えるお母さんであり、今年3月からフリーランスになったWebデザイナーでもあります。まず、フリーランスになったきっかけを教えてください。

ズバリ、保育園に落ちたからです。以前は派遣でWebデザインの仕事をしていましたが、妊活するために一度離職したんです。2年前に娘が生まれ、また派遣で仕事を再開したいと思っていましたが保育園には入れなくて。正社員なら保育園に入園するためのポイントが加算されますが、私は仕事を辞めていたので点数が低くなってしまうんですね。私が住んでいる地域は保活の激戦区だったこともあり、入園できませんでした。
「どうしよう、在宅ワークをしたいけれど何を始めたらいいんだろう」と悩んでいましたが、そんな時に母校であるデジハリのFacebookを見たんです。そこで「フリーランスの始め方」というセミナーを見つけ、とにかくまず参加してみようと思いました。その後ほかのセミナーに参加するうち、在校生と友達になり、「校友会のイベントに行きませんか?」と誘われ、参加するために名刺やポートフォリオサイトを作り、イベントで出会った方から仕事を紹介され……と、とんとん拍子に進んでいきました。デジハリのFacebookが、私の再スタートのきっかけになったんです。しかも、デジハリのみなさんは生き生きしているんですよね。私は昼間、娘と二人きりですし、つながりがあるのもママ友だけ。デジハリの方々が輝いて見えましたし、触発されて仕事への意欲も高まりました。

――上田さんがデジハリに在籍していたのは、いつ頃ですか?

2003年から1年間、大阪校でWebとDTPを学んでいました(Macマルチメディアコースとデジタルパブリッシングコース)。

――なぜWebやデザインを学ぼうと思ったのでしょうか。

大学時代、芸術学を学んでいたので卒業後は美術に関する職に就きたいと考えていました。でも、当時は超就職氷河期。目指す職には就けず、なんとか受かったのが高校時代のアメリカ留学経験を活かした英会話教室の仕事でした。その企業は入社時期を選ぶことができたので、私は最も遅い1月入社を選択することに。そして入社までの期間、念願だったヨーロッパの美術館巡りをしようとバックパッカー旅行に出かけました。
その道中では、いろいろな方にお会いしました。シベリア特急に乗りたくてヨーロッパを縦断している年配のご夫妻、ブタペストでゲストハウスを経営する日本人……。夢を追ってキラキラ輝いている方と話すうち、「私もああいう生き方をしたい、妥協した人生は送りたくない」と強く思うようになりました。ただ、そこで同時に実感したんです。強みや技術がなければ、自分の道を進むことはできない。今の自分には強みがない、と。そこで、一度は入社するものの、デジハリで勉強することにしました。大学時代にも絵やデザインについて学んでいたので、自分の可能性を伸ばすならその分野。当時はスケルトンの青いiMacが流行っていて、「Macを使えたらかっこいい」という思いもありました(笑)。

コーポレートサイトで大切なことを多く学びました

――デジハリ卒業後は、どんなお仕事をされていましたか?

派遣でWebデザインの仕事をしていました。当時はNTT系列のコンテンツ配信会社でWeb制作を担当したり、NTTドコモのiモードサイトを制作したりしました。

――ご結婚されたのはいつでしょう。

2006年です。結婚を機に仕事を辞めて、5年ほど専業主婦をしていました。でも、また仕事をしたいと思い、もう一度勉強し直すことに。そしてWebデザイナー検定エキスパートに合格し、派遣の仕事を再開しました。その頃、夫の転勤で東京に引っ越すことになり、私は富士通に派遣されることになりました。

――大手企業でお仕事をされる機会が多かったんですね。

企業は、すべてにおいてレギュレーションが多いんです。ソースの書き方、バックアップの取り方などが厳密に決められているため、自分らしさを出せずに面白くないなと思った時期もありました。でも、今思うとこうした経験が、私のベースを作っているんだと思います。

――それはどういうことでしょうか。

既存のページの構成を理解し、その枠組みの中で新たなページを作れるのは、企業で共同作業をしていたからこそ。その後の運用を考え、他の人が見てもわかりやすい構成にすることも企業で覚えました。また、色弱の方にも見やすいカラー選択、どんな方でも使いやすいユニバーサルデザインについても、多くのことを学びました。こうした経験が、今の私の強みになっています。

デジタルハリウッド大阪校卒業生 Webデザイナー/フリーランス 上田智子さんの写真 その3

やってみないと始まらない! 小さな一歩を踏み出すことが大切

――上田さんのような立場のデジハリ卒業生も多いと思います。フリーランスになるのは勇気が必要だったと思いますが、どのように乗り越えたのでしょう。

どんなことでも「とりあえずやってみよう」と思うことが大切です。「結果を残せるかどうかは別として1年間は精一杯やってみよう、やってみないと始まらない」と自分に言い聞かせ、一歩を踏み出しました。
こうした気持ちになったのも、デジハリのセミナーに参加したことが大きかったですね。当時は内にこもった生活をしていましたし、Facebookも非公開にしていました。でも「Webサイトを作るなら、顔を出したほうが信頼性がアップしますよ。自分は安全地帯にいて『あなたのWebサイトの集客をアップします』と言っても、説得力に欠けると思いませんか?」と言われ、確かにそうだなと思ったんです。そこで「よし、フリーランスになるなら今までのやり方を変えてみよう。新しいことにチャレンジしよう」と思うようになりました。他にも、使っていたテキストエディタを変えるなど、小さなところから新しいことに挑戦していきました。

――小さなことが連鎖して、大きなチャレンジにつながったんですね。

そうですね。まずはフリーランスで今年1年頑張ってみて、来年保育園に受かったら派遣に戻ったり、娘が幼稚園生になれば正社員を目指したり、臨機応変に考えていきたいです。人生長いので、つまづきながらも自分のペースで進んでいけたらと思います。

――現在は2歳のお嬢さんがいる中、自宅でお仕事されていますよね。在宅ワークに苦労はありませんか?

私が仕事をしていると、娘が「だっこ」と膝の上に乗ってキーボードを触りたがるんです(笑)。
ですから、仕事に集中できるのは娘の昼寝中、もしくは夜中。寝る時間は、どうしても2時、3時になってしまいます。それもあって、現在は小さな案件に絞って仕事を請けています。

――お子さんのお世話をして、自分の健康も管理して、そのうえで仕事もするとなると、タイムマネジメントも大変そうですね。

まだフリーランスになったばかりなので、うまくできているとは思っていません。でも、今は仕事が楽しいので疲れを感じないんですよね。作業時間を確保するために早起きしたり、娘を早く寝かしつけるために日中は一生懸命遊ばせたり(笑)。試行錯誤の連続です。

――課題を感じていること、悩んでいることはありますか?

自宅で仕事をするのは、娘にとってあまり良い環境ではないのかなと思っています。というのも、私が娘の前でパソコンを触っていると、気持ちが不安定になるみたいなんです。自分が呼んでいるのにこっちを向いてくれないという状況に、不安を感じるのかもしれません。そういう日は、夜泣きしてしまうんですね。ですから、一緒にいる時は娘をしっかり見る。そうすれば気持ちも落ち着きますし、夜に起きてしまうこともないのかなと思っています。

――旦那さんとはどのようなお話をされていますか?

主人はデジハリに通うことも、仕事をすることも応援してくれます。これまでワンオペ育児でストレスを溜めていた時期を知っているので、よけいに応援してくれるのでしょう。帰宅時間は遅いのですが、私が土日にセミナーに行く時には娘の面倒を見てくれます。

デジタルハリウッド大阪校卒業生 Webデザイナー/フリーランス 上田智子さんの写真 その4

子育ても仕事も諦めない 自分のやりたいことにチャレンジを

――現在は、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

まだ始めたばかりで、言うほど仕事をしていないのですが(笑)。過去の経験を活かしてコーポレートサイトのデザインやコーディングをしています。一からサイトを制作するとなれば工数がかさみますが、コーポレートサイトは既存のページの更新がメインです。そういった細々した作業は、大きな仕事をしているWebデザイナーにはなかなか対応しきれません。それなら、私がお請けしようという考えです。

――Webデザイナーは、一からサイトを構築して自分の名前を売り込みたいという方も多いですよね。その一方で、ページの更新や追加コーディングのような仕事も重要です。上田さんは後者に特化したスタイルなんですね。

そこを強みにできるというのも、デジハリの方に言われて気づいたことです。それに、名刺には「デザイナー」と書いていますが、デザインよりもコーディングやカスタマイズをしている時のほうが楽しいんです。最新の技法や凝ったデザインよりも、シンプルでわかりやすいサイト構成、ユーザービリティを優先したサイト制作を心がけて仕事に臨んでいます。私の名前は出なくても、サイトを見る方が快適であればいい。ですから、デザイナーというより職人に近いですね。

――コーディングやカスタマイズには、どのような楽しさがあるのでしょう。

他の人が作ったサイトをカスタマイズするのは、パズルを解くのに似た感覚なんです。それに、ソースを見るとその人の人生が見えます(笑)。
元を修正せずに無理やり上書きしているCSSを見ると、「この人、自分勝手なのかな。恋愛でもひとりよがりに突っ走っちゃうんだろうな」なんてことを思ってしまいます(笑)。
そうやってツッコミを入れながらソースを見るのが楽しいんです。

――お仕事をするうえで、大切にしていることはありますか?

モットーは、必ずバリデートクリア(正しく記述されているか検証)したソースを納品すること。どんなに優れたデザインでも、記述に問題があってはダメですよね。お客様あっての仕事ですし、自分の技術をこれでもかと詰め込むより、お客様に満足していただけるのが一番です。また、一緒に制作するスタッフと作業共有しやすい構成にすることも心がけています。今はWeb業界の分業化が進んでいますから、臨機応変な構成にしないと納品先で作業する人が困ってしまいます。のちのち同じソースを触る人が改変しやすいよう、わかりやすくしています。

――その辺りにも、企業での就業経験が活かされていますね。

そうですね。最初からフリーランスで活動していたら、自分のやり方しかわからず取り残されてしまっていたかもしれません。

――今後はどんなお仕事をしていきたいですか?

個人が経営する小さな店舗のWebサイトなど、地域に密着した仕事ができたらいいなと思っています。そのために、マーケティングも学びたいんです。小さなお店をアピールするサイトですから、「このお店の売上をアップするには何をすべきか」「お客様はどんな情報を求めてサイトを訪れるのか」ということから知る必要があります。デザインやコーディングに加えて、コンサルティングも含めた提案できるようになりたいです。

デジタルハリウッド大阪校卒業生 Webデザイナー/フリーランス 上田智子さんの写真 その5

全国にママクラスを 校友会でもっとデジハリの輪がひろがったら

――フリーランスとしての目標をお聞かせください。

子育てとのワークバランスを大切にしていきたいです。子育てもないがしろにしたくありませんし、仕事も自分のペースでずっと続けていきたいと思っています。
私は高校時代にアメリカに留学していましたが、そこで出会ったお母さんたちはみなさん働いていたんですよね。娘が産まれた頃、当時の友人が新婚旅行で日本に来たのですが、彼女に言われたんです。「で、いつから仕事に復帰するの?」って。その時は育児で精一杯でしたから、思ってもみない言葉でした。他にも、アメリカの友達と話していて「智子は今後どうしたいの? ずっとマザーをやっていくの?」って聞かれてグサッと来たこともありました。
思い返せばアメリカで会ったお母さんは、当然のように働いていました。友人のお母さんは、小さいお子さんを二人抱えながらも看護学校に通っていましたし、今ではその経験を活かして在宅で医療相談の電話を請けながら、職業ミシンで刺繍を始めたそう。
留学先のホストファザーは小児科医でしたが、お子さんが生まれた時には「僕が主夫をやる」と子育てに専念し、看護婦長だったお母さんが働きに出ていました。少ししたら今度はお父さんが働いて、お母さんが子育て。
働き方に多様性があるんですよね。当時は新しいなと感じていましたが、今の日本ならこうした多様性も受け入れられるはず。
お母さんたちも自分のやりたいことにチャレンジする時代になったのかなと思います。
子育ては子育てで大事ですが、自分のキャリアはきっちり積み重ねる。そういうスタンスにあこがれていますし、自分でも実現したいと考えています。ですから時間がかかってもいいし、仕事量がほんの少しでもいいので、とにかく働き続けていきたいですね。しかも、Web業界は少しでもブランクがあると後れを取ってしまいます。技術をキャッチアップしていくためにも、ずっと仕事を続けていきたいですね。

――フリーランスとして活動するお母さんは、今後さらに増えそうです。

デジハリにもママクラスがありますよね。セミナーに参加した渋谷校にも、教室内にキッズコーナーがあって驚きました。セミナー中に赤ちゃんを抱っこしたり、おやつを食べさせたりしてもいい。すごく素敵な風景だなと思いました。私が卒業した大阪校にもママクラスが開校されるそうですが、この取り組みを全国に広げてほしいですね。デジタルハリウッド校友会のつながりも、もっと広げてほしいです。全国各地で同窓会やイベントが開催されれば、新しい輪が生まれるかもしれません。
私もちょうど今、本格的にSassとPHPの勉強がしたいなと思っているところなので、ステップアップ用のクラスがあったらまたデジハリに戻ってきたいと思っています。自分を何度もバージョンアップさせてくれる、デジハリとはそういうプラットフォームだと思います。

インタビュー : 野本由起

Webデザイナー/フリーランス
上田 智子さん(デジタルハリウッド大阪校卒業)

企業Webサイトやイントラネット更新などの業務経験を重ね、2017年3月フリーランスのWebデザイナーに。
2歳のお子さんを持つ主婦でもある。
上田さんの制作実績などが掲載されているウェブサイト:http://www.uedat.com/

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