Interviewインタビュー

No.7

公開日:2016/10/28  取材日:2016/10

Web制作で知った“コミュニケーション”の奥深さ 現在、IoTスタートアップ企業で広報として活躍中

Webデザイナーディレクターフリーランス デジタルハリウッド東京本校

No.7

株式会社Cerevo マーティング・広報
田中 佑佳さん(デジタルハリウッド東京本校卒業)

デジタルハリウッド東京本校卒業生 株式会社Cerevo マーティング・広報 田中佑佳さんの写真 その1

このインタビューは2016年10月当時の内容です。

デジハリで「プロとして仕事にするならこうすべき」と

――田中さんがデジタルハリウッドに入学した理由を教えてください。

もともとイラストを描くのが好きだったので、作品を公開するWebサイトを作ろうと思ったんです。それが、中学3年生の頃ですね。当時はホームページを簡単に作れるサービスが流行りはじめた頃なので、独学でサイトを作っていました。ですがそのうち、絵を見せるよりもWebページのデザインを考えるほうが楽しくなってしまって(笑)。そこで、高校に進学せずデジタルハリウッドに入ろうと思ったんです。でも、親や教師から「さすがに高校は卒業しておいたほうがいい」と言われて……。そこで、高校卒業後の2004年から1年間、デジハリのWebディレクターコースに通いました。

――最初からデジハリに入ろうと決めていたんですね。

中3の時に調べたところ、当時はWebをしっかり教えてくれる専門学校が数校しかなかったんです。そこで各校を見学し、いろいろとお話をうかがったところ、やはりデジハリがいいなと思いました。入学前に相談にうかがった際はWebデザイナーコース志望でしたが、スタッフの方から「これからはデザイナーよりもディレクターがアツい」と言われ、ディレクターコースに変更しました(笑)。

――デジハリでは、Webについて一から学び直したのでしょうか。

Adobe系ソフトの使い方、htmlの書き方からWebディレクターの立ち位置まで、すべて教わりました。独学で学んでいた分野もありましたが、「プロとして仕事にするならこうすべき」という点まで教えていただき、勉強になりました。

デジタルハリウッド東京本校卒業生 株式会社Cerevo マーティング・広報 田中佑佳さんの写真 その2

派遣でスタート、その後転職し、サイバーエージェントに入社

――今も当時のデジハリ生をおつきあいはありますか?

今でも連絡を取り合っています。同級生ではありませんが、Web関係の交流会に出席するとデジハリの方に偶然会うことも多いですね。

――卒業後の進路についてお聞かせください。

当時の私はまだ19歳でしたし、どの会社が良いのか判断できるだけの知識がありませんでした。そんな状態でひとつの会社に入っても、ひとつのやり方しかできない人になってしまいます。そのため、当時デジハリと提携していた派遣会社に登録し、5、6社でWeb制作を手がけました。そこで気づいたのは、私には自社サービスを運営する企業が向いているのではないかということ。最初は「Webを作るなら、Web制作会社に行くべき」という考え方でしたが、自社サービスを持つ企業でWebサイトのより良い運用について考えるほうが楽しいと気づいたんです。確かにWeb制作会社で働いたほうが、デザインのスキルは身につくと思います。ただ、私は職人的にスキルを突き詰めるよりも、Webサービスをトータルで考えるほうが楽しいと感じました。

――それで転職を?

はい、2011年頃にサイバーエージェントに契約社員として入社し、スマートフォン向けサービスのデザイン、ディレクションを担当しました。そこでは、どのようにユーザー満足度を高めるか、ユーザーのニーズに応えてスピーディに改善するかなどを学びました。

デジタルハリウッド東京本校卒業生 株式会社Cerevo マーティング・広報 田中佑佳さんの写真 その3

Cerevoで、自分のデザインスキルを高めるために広報の仕事にチャレンジ

――その後、Cerevoに入社するまでの経緯をお聞かせください。

その後、他の企業で新規事業立ち上げに参加しつつ、フリーランスでWeb制作を始めました。そんな時、もともと友人だったCerevo代表取締役の岩佐、広報の甲斐から「広報の人材が足りないので、興味があればやってみないか」と声をかけられました。ちょうど広報の業務に興味が湧いていた時期だったので、やってみようとCerevoに入りました。

――「広報に興味があった」とは?

フリーランスで活動するようになり、企業の内部に深く入り込んでWebを制作するのと、外側に身を置くのとではコミュニケーションの重要性が違うと実感しました。それに、長らくWebデザインに携わってきて、「コミュニケーションもデザインのひとつだ」と思うようになったんです。たとえばスマートフォンのサービスを作る際、端末の向こう側にいるユーザーの気持ちを考えたうえでデザインを作り上げていきます。それも、ユーザーと私のコミュニケーションですよね。使う人の気持ちを考えて、どのように形にするか、それがデザインでありコミュニケーションだと思うので。そこでコミュニケーションを扱う業種をいろいろと調べたところ、広報もそれに近いと思うようになりました。広報の業務は多岐に渡りますが、主となるのはみなさんにお伝えしたい事柄をどのように伝えるか考える仕事。それもデザインの一環ではないかと思い、自分のデザインスキルを高めるために広報の仕事にチャレンジしました。

――現在勤務されているCerevoについて教えてください。こちらの会社では、どのようなことをされているのでしょうか。

Cerevoは、「Consumer Electronics Revolution」(家電の革命)を略した造語です。「インターネットを家電を組み合わせて、生活をより良く変えていきたい」という思いで、2008年に設立されました。わかりやすく言うとIoTのモノを作っている会社ですね。世の中には、「あったらいいな」と思うものはたくさんありますが、Cerevoが目指すのはグローバルニッチ。全員が欲しいとは思わないかもしれませんが、一部の人が「絶対欲しい!」と思えるものだけを作るようにしています。

――たとえば、どんなモノを作っているのでしょうか。

例えば、カメラにつけるだけでYouTubeなどに動画をオンライン配信できる映像配信機器シリーズがあります。最近人気が高いのは、アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」の劇中に登場するアイテムを再現した「DOMINATOR」。他には、プロジェクタを搭載し、室内を移動・変形するホームロボット「Tipron」もあります。

hand

trans

projector

――ユニークな製品が多いですね。マーケティング的な発想ではなかなか誕生しないアイテムばかりですが、どのような発想で商品企画を行っているのでしょうか。

社内のチャットツールに、みんなが意見を出し合っているんです。思いつきレベルのアイデアを投稿し、その中から「いいな」と思うものはブラッシュアップしていきます。弊社にはいろいろな種類のオタクがいるので、そういう人たちが「俺はコレが欲しい!」と熱く提案すると、面白いものができあがるんです(笑)。

――業績も上がっているようですね。

2014年始めの頃には約20人だった社員が、今では約90人になりました。設立当初の2008年には、家電とインターネットを組み合わせてモノを作るなんて、誰もピンと来ていなかったと思います。でも、最近になってIoTの波がきていますよね。そこでエンジニアを増やし、多ジャンルにわたるアイテムを一気に作っています。

デジタルハリウッド東京本校卒業生 株式会社Cerevo マーティング・広報 田中佑佳さんの写真 その4

ユーザーやメディアとのコミュニケーションが本当に大事

――その中で広報として活躍されていますが、初めての職種はいかがですか?

リリース資料を作ったり、状況に応じてWebサイトのデザインやコーディングをしたり、ハードウェアの知識を学んだり、忙しい日々を送っています。ユーザーやメディアとのコミュニケーションが本当に大事だと実感する毎日です。

――扱っている製品が特殊なので、伝え方も難しそうですね。

そうなんです(笑)。ちょっと変わったモノを作っているので、そういうモノが好きな方々に伝わるようにするのが大前提。逆に、デジタルにあまり詳しくない方にもガジェットとしてのかっこよさが伝わるように、強弱をつけようと心がけています。たとえば展示会では、いろいろなお客さまにはお声をかけてデモ機を触っていただきつつ紹介しますし、詳しくないお客さまの興味を引くようなポストカードなどの販促物をお渡しします。

――製品のプレスリリースを作る際に、心がけていることは?

エンドユーザーが、企業のプレスリリースをそのまま読むことは全体でみるとあまりなく、こちらが出したリリースをメディアに取り上げていただき、それをユーザーが目にします。そこに至るコミュニケーションを大切にしています。また、メディアからユーザーに情報が伝わると反応が返ってくるので、そこでどのようなアプローチが有効か改めて考えます。そこが楽しいですね。

――デジハリに通っている人は、御社の製品に興味があるのではないかと思います。おすすめのアイテムはありますか?

Web系の方におすすめなのは「Hackey」。鍵をひねるだけでWebサービスを設定どおりに動作させることができるものです。たとえば「Hackey」を会社に置いておけば、鍵をひねるとTwitterやFacebookに「出社しました」と自動的に投稿することができるんです。応用すれば、鍵をひねるだけで家中の電気を消すなどの使い方もできます。それに、今はIoTの時代と言われますが、何から取り組んでいいのかわからない方も多いと思うんです。そういう方が使えば、「これとこれをつなぐとどうなるのか」「自分の生活はどう変わるのか」と考え、新しい製品、サービスを思いつくきっかけになるのではないかと思います。Cerevoの製品はすべてオンラインストアでも販売しているので、ぜひよろしくお願いします(笑)。


――ちなみに、本日の取材は秋葉原にあるものづくり施設「DMM.make AKIBA」で行っています。こちらもCerevoが関わっているのでしょうか。

そうなんです。「DMM.make AKIBA」は、2014年11月に「秋葉原にものづくりの聖地を作りたい」という目的でオープンした施設です。Cerevoは以前から秋葉原でものづくりを頑張っていたので、ものづくりの先輩として協力しています。施設の立ち上げ時には、弊社代表の岩佐が機材選定などを行いました。弊社のエンジニアも良く利用し、ここで試作を重ねて発売にいたった製品も。お近くの方は、ぜひご利用ください。

――最後にCerevoの展望、そして田中さんご自身の展望をお聞かせください。

Cerevoでは、これからも新しいもの、今まで見たことはないけれど「コレ、欲しかった!」と思っていただける製品を作り続けていきます。私個人としては、コミュニケーションを軸として自分の中にどのように積み上げていくか考えているところです。Cerevoで作る製品にしてもデザインにしても、国という枠組みは関係ありません。国を越えてどこまで広げていけるか、今後の課題にしていきたいですね。

インタビュー : 野本由起

株式会社Cerevo マーティング・広報
田中 佑佳さん(デジタルハリウッド東京本校卒業生)

デジタルハリウッド卒業後、派遣社員として数社でWeb制作を手掛けたのち、サイバーエージェントでアプリサービスのデザイン、ディレクションに従事。
その後、2015年6月よりCerevoの広報に。
会社に勤務するかたわら、フリーランスとしてWeb制作も行っている。
Cerevo : https://cerevo.com
田中佑佳さんの個人サイト : http://akuyan.to

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