Interviewインタビュー

No.3

公開日:2016/02/23  取材日:2016/02

今、興味があるのはドローン講座 イタリアの畑を低空飛行し、4K映像を撮影してみたい

フォトグラファーフリーランス デジタルハリウッド東京本校

No.3

フリーカメラマン
坂本 晶子さん(デジタルハリウッド東京本校卒業生)

フリーカメラマン 坂本晶子さん写真 その1

このインタビューは2016年2月当時の内容です

漫画家を目指していたらカメラマンに

――坂本さんがカメラマンを目指したきっかけを教えてください。

20歳を超えるまで、カメラマンになるなんて思ってもみませんでした。小さい頃にあこがれていたのは、サンリオのキャラクターをデザインする仕事。中学生になってからは漫画を描くようになり、毎月同人誌を作っていました。そんな中、運よく漫画家さんと知り合い、15、6歳で漫画家事務所に出入りするようになりました。その後、漫画家のプロアシスタントの経験をアピールし、AO入試で京都精華大学に入学。大学2年生の時には、芸舞妓がいるお座敷に料理を仕出しをするお店で働きながら、日本の踊り、祭りの時に食べる料理について研究していました。取材を元に、踊りや料理に関する漫画を描きたいと思っていたんです。そんな中、学校側から印刷物の制作を頼まれて……。人手が足りなかったため、カメラを渡されて学校のスナップを撮影したのがカメラとの出会いです。当時はもちろん写真を仕事にするなんて思ってもみませんでした。

――でも、そこで面白いと思ったから写真の道に進んだんですよね?

当初は、撮った写真を使って誌面をデザインすることに興味がありました。でも、いろいろな方のお話を聞いたり、スナップを撮ったりするうちに、写真の面白さに気づきはじめたんです。私はもともと、取材をすることが好き。それまでは取材したものを漫画という形でアウトプットしていましたが、その表現方法が写真へと移っていったんです。そこで、大学卒業後に写真を学ぶため、専門学校に通い始めました。

――写真の専門学校を卒業後、デジハリに入学されています。そのきっかけは?

当時はフィルムが主流で、デジタルカメラは出始めたばかりでした。私は機械音痴だったので、一度デジタルについて学んでおかければついていけなくなると思ったんです。それに、もともと漫画を描いていたため、誌面レイアウトやコマ割りが好きだったんですよね。そこでグラフィックデザインを学ぶために、デジハリに入学しました。

――デジタルは苦手とのことでしたが、入学後の感想は?

パソコンを学ぶのが初めてですし、当時は落ちこぼれでした。やりたいこと、表現したいことはあるけれど、どうやってツールを使っていいかわからなくて。自分ではパソコンを持っていなかったので、デジハリに泊り込んで作業していました。おかげでPhotoshopやIllustrator、InDesignはひととおり使えるようになりました。

――デジハリ卒業後からフリーになるまでの経緯をお聞かせください。

最初は料理専門のキッチンスタジオで、約2年間スタジオマンとして働いていました。カメラマン、ムービーカメラマン、出版社の編集者と一緒に仕事をする中で、どうやって1冊の本、1本の動画を作るのか学んでいきました。その後、料理雑誌のスチールやムービーの撮影をする制作会社に移り、約2年半勤めることに。ただ、料理カメラマンとして未熟なのに、動画の撮影、編集、音声まで担当することになり、中途半端な何でも屋になってしまわないか危機感を覚えるようになったんです。そこで独立し、フリーのカメラマンになりました。

――現在は、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

料理雑誌をメインに、植物や動物の書籍など自分の好きなことを中心に取り組んでいます。地域や四季、食文化に関することが好きなんです。

――こうしたテーマを選ぶようになった理由は?

小さい頃から家庭菜園をしていたからでしょうか。また、父が趣味で蝶を研究していたので、幼い頃から休日は阿蘇に出かけたり、長野まで蝶の卵を取りに行ったりしていたんです。当時は意識していませんでしたが、もしかしたらこの経験からいろいろな地域、四季に興味を抱くようになったのかもしれません。

フリーカメラマン 坂本晶子さん写真 その2

国内だけではなく海外でも活躍。長期取材になることも

――国内でお仕事をしつつ、海外でも取材や撮影をされているそうですね。

大学時代から、踊りや伝統的なお祭り、料理について調べていました。20代の頃から踊りのサークルにも参加しています(http://homepage2.nifty.com/kamifami/)。アウトプットは写真ですが、取材自体が好きなんですよね。最初は国内でしたが、海外へと興味が広がり、ベトナム、インド、タイなどを約10年撮影しました。2012年からはイタリアに長期滞在し、取材と撮影をしています。ヨーロッパで野菜や料理を勉強するなら、イタリアかなと思ったので。自費での撮影ですが、撮りためた写真は後から雑誌や書籍に使ってもらうこともあります。半年間インドに滞在した時は、レストランに通って裏側を見せてもらい、その時に撮った写真が料理雑誌に掲載されました。

――カメラマンとして、やりがいを感じるのはどんな時でしょう。

取材対象物に馴染めた時です。相手と仲良くなるというより、その環境にスッと入っていけた時。国内で雑誌の仕事をする時は、多くの場合1日で撮影が終わります。でも、イタリアや日本の農家を長期取材する際は、数ヵ月間まるまる同じところにいて、朝から晩まで一緒に働きながら写真を撮るんです。一緒に行動していると、彼らのスタンス、考え方が肌感覚でわかる時が来ます。そうなるとストンと吸収できますし、自分でも納得のいく写真が撮れます。

――それだけ長期間一緒に過ごすからこそ、良い写真が撮れるのですね。

それに、農家のつらさを理解すると、国内で1日の撮影を行う時にもなんとなく農家の方が伝えたいことがわかるんです。農家への尊敬の念を抱かず、下調べもせずに取材に行くと、先方には「わかってないな」と思われてしまいますよね。農家の方が言いたいことを理解し、どんなシーンを撮影してほしいのか把握しないと、記事そのものも中途半端な内容になってしまうんです。私が料理や農業について勉強するのは、取材対象をより深く理解したいから。たまたま1枚だけ良く撮れたというのでは、プロとして不十分です。確実に良い写真をおさえるために、前段階の勉強や農家の方と一緒に過ごす時間が必要なのだと思います。

フリーカメラマン 坂本晶子さん写真 その3

負けないぐらいの愛情と知識、一生懸命取り組む姿勢

――そういう気持ちは、取材対象の方にも伝わりますよね。

信頼関係を築くことが大事だなと思います。逆に、適当な気持ちで取材に行くと揉めることもあります(笑)。でも、せっかく出会うことができたのに、コミュニケーション不足で仕事が破綻するのはもったいないですよね。ですから、編集者さんと農家の方が揉めた時は、個人的に農家の方へお詫びのメールを送ることもあります。編集者、ライター、カメラマンでひとつのチームなので、「自分は写真を撮っていればいいや」というスタンスではダメですよね。

――フリーランスとしてやっていくためには、人間関係も重要ということですね。

そうですね。あとは自分のスペックを理解すること。カメラマンとしての能力、できる範囲を理解することが大事だと思っています。

――坂本さんの武器は何でしょうか。

得意分野は植物、畑です。他のカメラマンさんには負けないぐらいの愛情と知識、一生懸命取り組む姿勢はあると思います。写真を撮るためなら、ひとりでヒマラヤ山系にテントを張って1週間過ごすのも苦になりません(笑)。取材対象物のいちばん良いところを伝えたいと思って、日々撮影に臨んでいます。

――でも、過酷な撮影現場も多かったのでは?

リスク管理には気を付けています。とはいえ、雲南省のシャングリラで湖に落ちたり、雲南省・大理の火祭りでは大木が落ちてきて目を焼いたりしました。一時は失明を覚悟しましたが、なんとか無事でしたね。

フリーカメラマン 坂本晶子さん写真 その4

イタリアでドローンを飛ばして畑を空撮してみたい

――それは何よりです。では、今後挑戦したいことは?

2017年から「国際バラとガーデニングショウ」に参加します。西武プリンスドームで開催されるショウですが、こちらにガーデナーとして出展する予定です。私が撮影した花の写真をハイビジョンモニターで展示するとともに、植物の販売も行います。専門家が多数来場するので、ここで私の写真をアピールすれば営業になるかな、と(笑)。
現在、実家のある福岡で約200坪の畑を持っているので、そこで植物を育て、写真を撮りためつつ販売もする予定です。

――植物の販売と写真の営業を、同時に行うんですね。他に、今後の展望はありますか?

今、興味があるのはドローン撮影です。私はスチールだけでなくムービー撮影も行っているので、すでにドローンの仕事も経験しています。その経験を活かし、今後はイタリアでドローンを飛ばして畑を空撮してみたいですね。畑を低空飛行して、農作業の様子や植物を追いかけたいんです。Mayaで計算しつつ、4Kカメラを載せてドローンを飛ばせたら面白いかなと思って。私の目標は、あと5年ほどイタリアを取材し、本を出版することです。それに併せて写真展を開き、壁にドローンで撮影した映像を映し出せたらいいなと思います。動画とスチールをうまくミックスして、北イタリアから南イタリアの四季、その地域で食べられる野菜を紹介できたらうれしいですね。それもあって、デジハリのドローン講座に興味津々なんです。2年後ぐらいに、ぜひドローン講座を受けてみたいです。

――すでにお仕事でドローン撮影をされていますよね。それでもデジハリで学びたいと思うのは、なぜでしょうか。

まず、デジハリがドローンで何をやろうとしているのか知りたいという思いがあります。そして、他の受講者と仲良くなりたい。ムービーの撮影にはスタッフが3、4人必要なので、一緒に仕事をするパートナーを見つけたいんです。そうなれば、私が監督して他の方にドローンを操縦してもらったり、逆に私が操縦したり、チームで撮影できますから。他の方と接することで自分にない感覚を学び、撮影に活かしたいですね。

インタビュー : 野本由起

フリーカメラマン
坂本 晶子さん(デジタルハリウッド東京本校卒業生)

フリーカメラマン。日本食生活ジャーナリスト協会会員。京都精華大学人文学部、日本写真芸術専門学校フォトフィールドワーク卒業後、デジタルハリウッドでグラフィックを学ぶ。スタジオ、スチール・ムービー制作会社を経て、2012年独立。国内で雑誌、書籍、広告などの撮影に従事するかたわら、海外で植物、料理、文化に関する取材・撮影も行っている。現在は、1年のうち3~6ヵ月をイタリアで過ごし、農作業を手伝いながら畑や植物を撮影している。
坂本晶子さんのイタリアでの活動を紹介したサイト :
http://www.ilgolosario.it/assaggi-e-news/attualita/balla-con-contadini-motoko-iwasaki

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