Interviewインタビュー

No.55

公開日:2022/11/06 

かつての受講生が、いまや受講生を採用する側に! デジタルハリウッドで描くことができたクリエイターとしての一貫したキャリア

CGデザイナーディレクター代表取締役映像ディレクター デジタルハリウッド東京本校

No.55

株式会社イマジナリーパワー
代表取締役
坂井隆志さん(デジタルハリウッド東京本校、デジタルハリウッド大学大学院修了)

映画をはじめ、テレビ、CM、広告、ゲームなど、さまざまな業界で3Dを使用したCG映像の制作を手がける株式会社イマジナリーパワー。『キングダム2 遥かなる大地へ』、『るろうに剣心』など、誰もが知る映画の制作に関わっているほか、近年ではXR技術を活用したコンテンツの開発、プロジェクションマッピング、デジタルサイネージなど、仕事の幅をますます広げています。代表取締役であり、制作のディレクターも務める坂井さんは、デジタルハリウッドスクールの出身者。設立から20年の歴史の中で、数多くのデジタルハリウッド出身者を採用しているそうです。なぜデジタルハリウッドなのか、デジタルハリウッド キャリアセンター長の座間味涼子さんも交えてお話を伺いました。
(※このインタビューは、2022年8月当時の内容です。)

パソコンを使ったクリエイティブに熱中した大学時代

Q
最初に、坂井さんがデジタルハリウッドに入学された理由を教えていただけますか。
A
坂井:CGの勉強がしたかったからです。当時(1990年代後半)、僕は埼玉県の大宮に校舎があった芝浦工業大学システム工学部電子情報システム学科の学生だったんですけど、そこで出合った3Dで建築の設計をするためのソフトウェアにすごくのめり込んでいて。パソコンを使ったモノづくりには以前から興味があって、特に中学生の終わり頃に発売された「FM TOWNS」というパソコンに感化されました。映像や音楽を扱えることから「マルチメディアパソコン」と謳われて、クリエイティブの敷居がだいぶ下がったんですよ。「パソコンを使えば、いろいろなことができるんだな」という感動がありましたね。高校生になってもパソコンは買ってもらえなかったんですけど、大学には最新のソフトが入ったワークステーションがあって自由に使うことができました。もう授業そっちのけで、毎日パソコンばかりしていました(笑)。もっとCGについて勉強したいと思ったときに知ったのがデジタルハリウッドでした。

刺激的だった、泊まり込みでの制作の日々

Q
在学中のエピソードを教えてください。
A
坂井:大学を2年でドロップアウトしてデジタルハリウッドを志願したけれど、入学審査で落ちたんですよ(笑)。芸術系のコースと、技術系のコースがあって、僕は前者を志望したんですけど、そもそも応募資格が「4年生の大学を卒業した方、もしくは社会人経験のある方」という条件だったので、受かるはずもなかった。でも、たまたま面接をしてくれたのが杉山学長で、何を買ってくれたのかわからないんですが……さまざまな取り計らいをいただいて、希望通り芸術系のコースに入学することができたんです。その体験がまず印象的でした。
Q
大学を辞めてまで入りたかった、そんな情熱を買ってくれたんですかね。そのほか、記憶に残るエピソードはありますか?
A
坂井:僕は1年間コースだったんですけど、とても濃い1年間でしたね。これは当時のデジタルハリウッドの気風でもあると思うのですが、入学してから半年間はいろいろと教えてくれるのに、後の半年は放任主義というか……「自分たちで試行錯誤しろ」というスタンスで、ちゃんと授業をしていない(笑)。その代わり、学校に行けばパソコンが使えたので、週に3日ある授業の日以外は、学校に寝泊まりしながら制作をしていて。周りのみんなも同じような感じで、いい意味で学校という印象が弱いんですよね。しかも、一台のパソコンを3人で共有していたので、毎日取り合いでした(笑)。こういう世界があるんだと衝撃でしたね。
Q
仲間たちと切磋琢磨しながらクリエイティブに打ち込む。大変だけど、楽しそうな環境ですね。
A
坂井:だから、デジタルハリウッドを修了した後も、会社に入ってサラリーマンになるという発想は全然なかったですね。デジタルハリウッドでの生活の延長線上で仲間たちと事務所を作って制作を続けていました。仕事ではなく、純粋に自分の作品を作っていただけ。そのうち、企業に就職した仲間たちが仕事を紹介してくれるようになり、2〜3年経つと規模も大きくなって。そこで、個人事業主ではまずいと思い、2003年に法人化することにしました。

デジタルハリウッドの採用イベントは学生たちと直接会話ができる

Q
デジタルハリウッドの仲間たちと立ち上げた、株式会社イマジナリーパワー。約20年経った現在も社員の半数がデジタルハリウッド出身者だそうですね。デジタルハリウッドの学生を積極採用されている理由とはなんでしょうか。
A
坂井:特に意識してデジタルハリウッドから採用しているというわけではないんですが……(笑)。他の専門学校の作品展に行って学生さんを探すこともありますし、人から紹介されたり、ごく稀に学生の方からうちの会社を見つけて、コンタクトを取ってきてくれるなんていう出会い方もあったりします。そんな中でデジタルハリウッドからの採用が多いのは、学生との接触機会が他よりも多いからだと思います。年に2回就職イベントを実施していますもんね。
Q
年に2回の採用イベントとは「クリエイターズオーディション」と、「スカウトミーティング」のことですね。これらのイベントがどういったものか、あらためてご説明いただけますか?
A
座間味:坂井さんに代わって、私の方から説明させていただきます。「クリエイターズオーディション」は、社会人向けの専門スクールのリクルーティングのイベントで、年に2回実施しています。卒業時のタイミングで就転職希望の方々の作品を採用企業に見ていただいて、直接企業の方がスカウト、お声をかけていただくというようなイベントになっています。

座間味:「スカウトミーティング」は、デジタルハリウッド大学の新卒が対象の就職イベントです。仕組み自体はクリエイターズオーディションと同じような感じで、その時点でまだ未内定の学生の作品を採用企業に見ていただいて、直接連絡を取ってもらうというイベントです。「クリエイターズオーディション」も、「スカウトミーティング」も、コロナ前はリアルイベントだったんですけども、コロナ以降はずっとオンラインで開催していますね。

坂井:「クリエイターズオーディション」も、「スカウトミーティング」も、受講生たちと個々に話ができるのがありがたいですね。他の専門学校の就職イベントだと、ポートフォリオが置いてあるだけで、直接会話をできないことが多いんですよ。デジタルハリウッドのイベントだと、リアルで開催していた頃は、作品上映会の後に懇親会があって、気になる受講生と会話ができる。直接顔を見てお話をした方が、その後、会社訪問に来てくれる確率も高いです。

座間味:コロナ禍でオンライン開催になりましたが、Zoomのブレイクアウトルームで個別に会話ができる仕組みになっています。受講生の顔を見ながら直接会話ができるというメリットは変わりませんね。

Q
毎年採用をされていて、専門スクールの受講生、デジタルハリウッド大学の学生、それぞれどのような特徴があると感じられていますか?
A
坂井:まず専門スクールの方は、「本当にCGをやりたい!」と明確な目標を持って入ってきている方が多いので、作品のレベルもかなり高い。みなさん社会人経験者ということもあり、社会常識もしっかりと身につけていますし、何より自分から積極的に学んでいかないと社会では生きていけないということを認識しているので、受け身の方が少ないように感じます
デジタルハリウッド大学については、CGを学んでいる方もいれば、僕らの全然知らない技術を使ってクリエイティブなことをされている方もいて、本当にバラエティ豊かですね。見ていて楽しいというか、こんなこともできるんだと感心してばかりです。それだけに、たまにすごく尖った才能の方と出会うこともあります
Q
株式会社イマジナリーパワーは、どういう人材と出会いたいとお考えですか?
A
坂井:仕事に情熱を持って取り組める人に出会いたいですね。というのもこの業界は、本当に仕事を好きになれる人じゃないとスキルも伸びないし、続けることも難しいからです。好きで好きでたまらないという気持ちは作品に必ず現れてくるので、僕はそれを見ています。
ところが今の世の中の流れとして、就活を始めるタイミングが早まっていて、学生たちが一つの作品をじっくりと作り込めなくなっているという実情もあります。専門学校は2年制であるところが多いのですが、1年生の間にポートフォリオをまとめて、2年生の春頃には就職を決めなさいと言われます。そうすると、ポートフォリオに入れるための小作品をどんどん作っていかなきゃいけなくなる。学校のカリキュラム的にも、自分の好きな作品を作ることよりも、CGソフトの技術を身につけることに重きが置かれているので、学生たちのモチベーションも上がりにくくなっています。
Q
そういう意味では卒業制作を携えて臨む「クリエイターズオーディション」「スカウトミーティング」は、学生にとっても企業にとってもベストなマッチングの機会ですね。
A
坂井:大手の企業さんのようなところだと、卒業まで1年以上前の段階で募集を始めていたりするので、卒業制作が完成した段階では企業の採用活動が終わってしまっています。それは学生さんにとってデメリットかもしれないですけど、我々のような中小の制作会社は通年採用活動をしていますし、作品が完成してから就職活動をされているので、スキルも明確で採用しやすいという側面はありますよね。
座間味:私から見ていても、「クリエイターズオーディション」や「スカウトミーティング」に参加する学生はその機会に賭けているというか、情熱的に作品づくりに取り組んでいる方が多いように感じます

楽しみながら試行錯誤する。デジタルハリウッドにはその文化が継承されている

Q
最後に、デジタルハリウッドには“Entertainment. It’s Everything!”(すべてをエンタテインメントにせよ!)という理念があるのですが、この言葉に対して共感するところはありますか?
A
坂井:共感しますね。僕たちのいる業界って今、クリエイターを育てるというより、オペレーターを育てるという世界になってきてしまっているんですよ。実際に仕様書に則って、モノを正確につくっていくという仕事が増えてきているんですけど、それだと仕事は面白くない。そんな中でも自分でいろいろと試行錯誤をしながら、苦しみながら手を動かしてモノづくりをしていくことがクリエイターの原点だと思うんです。楽しむ姿勢というのは僕も杉山学長に教わったし、その文化や精神をデジタルハリウッドでは絶やさないで欲しいなと思います。

坂井隆志さん(デジタルハリウッド東京本校、デジタルハリウッド大学大学院修了)
株式会社イマジナリーパワー代表取締役。デジタルハリウッド東京本校卒業後、2003年に卒業生たちとともに同社を設立。上海音楽学院大学(デジタルハリウッド提携校)、東京デザイナー学院などの講師を務める。

株式会社イマジナリーパワー
URL:https://www.imaginarypower.com/

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