Interviewインタビュー

No.51

公開日:2022/07/22 

パソコンも触ったことがない「元DJ」がテック業界の雄に。挑戦し続けるキャリアは「デジタルハリウッド」から始まった

デザイナー代表取締役 STUDIO渋谷

No.51

株式会社バニッシュ・スタンダード 代表取締役CEO
小野里寧晃さん(デジタルハリウッド渋谷校 修了)

店舗スタッフのDX化という発想で、“接客”の新たな地平を切り開いた“スタッフテック”サービス「STAFF START(スタッフスタート)」。2016年の立ち上げから『カンブリア宮殿』をはじめ、数々のメディアでも紹介され、今や導入する利用ブランドが1700を超えるまでに成長。同サービスの生みの親である、株式会社バニッシュ・スタンダード代表取締役CEOの小野里寧晃(おのざと やすあき)さんは、実はデジタルハリウッド出身。若い頃はパソコンも触ったことがなかった、そんな小野里さんにとって、デジタルハリウッドへの入学は人生の大きな転換点だったそうです。
(※このインタビューは、2022年6月当時の内容です)

店舗スタッフは店舗にしか立てない、給料が変わらない、そんな常識を革(あらた)めた

Q
「STAFF START」とは、どのようなサービスですか?
A
わかりやすく言うと、アパレルなどの店舗にいるスタッフ専用のオンライン接客アプリですね。店舗スタッフがこのアプリでコーディネート写真やレビューを投稿し、実際にECサイトで商品が売れると、その売り上げや評価が本人にも還元されるようになっています。従来は目に見えなかったデジタル上での店舗スタッフの業務や接客が可視化され、評価として反映されることで、スタッフのモチベーションも高まりますし、それがお客様に対する満足度の高い接客にもつながっていきます。現在はアパレルに限らず、小売やサービスを展開しているさまざまなブランド様にも導入いただいてます。

Q
店舗スタッフさんがファッションコーディネートを投稿する、いわゆるコーディネートアプリは以前から存在していましたが、それとの違いはなんでしょうか。
A
従来のコーディネートアプリは、店舗スタッフさんが忙しい業務の合間に商品の写真をメールに添付して本社に送付して、本社の担当者が写真を見てどの商品なのかを判断し、手動でコーディネートを投稿するという非常に煩わしいスキームとなっていました。「STAFF START」のアプリは、商品タグをスマホで読み込むだけで商品と紐づいて、すぐに投稿できます。僕らが最初にやったことは、そんな簡単なことだったんですけど、投稿が楽だということで、店舗スタッフさんからはすごく喜ばれましたね。
Q
小野里さんはキャリアを通じてECサイトの受託開発をずっと手がけられてきたそうですが、リアル店舗の店舗スタッフさんの目線に立ったサービスを開発された理由とはなんでしょうか。
A
店舗スタッフさんの力ってすごいんじゃないかということは昔から考えていました。依頼を受けて商品の紹介をするインフルエンサーさんと比べた時、店舗スタッフさんさんの強みは愛しているブランドを背負っていること。より誠実な情報発信や接客ができる立場ですよね。また、ECの開発に携わる中で、アパレルの店舗スタッフさんの給料がずっと変わらないという状況を見てきたことも、「STAFF START」を開発した理由のひとつです。大袈裟だけど、僕は毎月1億円売り上げている店舗スタッフさんがいたら、月1000万円お給料をもらってもいいと思うんですよね。給料が変わらないという常識を革め、店舗スタッフさんが実力や成果に応じて正しく評価されるようにしたいという思いがありました。

「デザイナー」という響きに憧れ、デジタルハリウッドの門を叩く

Q
もともと、小野里さんがITの世界に入られたきっかけはなんだったんでしょうか。
A
転機になったのは21歳の時ですね。当時はフリーターで、渋谷の日サロでバイトしたり、六本木のクラブで見習いDJをしたり、とにかく人生を楽しんでいました。上京して東京の友だちもたくさんできたし、自分のやりたいことができてよかったんですけど、ふとそんな自分に不甲斐なさを感じることもあって。世の中の成功している人を見た時に「自分って何者なんだろう」、「もっと自分の力を試さなければいけないのでは」と悶々としたんです。正直、DJも下手っぴでしたしね(笑)。喋る方が上手い、口だけDJ。でもパフォーマンスを通じて、多くの人を楽しませることは好きでした。もっとたくさんの人を喜ばせる仕事がしたいと兄貴に相談したら、デジタルハリウッドという学校があることを教えてくれたんです。
Q
それがきっかけで、デジタルハリウッドに?
A
「お前、インターネットって知ってるか?」「はいはい、Yahoo!みたいなやつでしょ?」みたいなレベルだったんですけど、「職業、デザイナーって言えるよ」と言われた時に、「ありじゃない?」とピンときて。デザイナーといっても、美術の成績2とかだったんですけど(笑)
Q
まずは「肩書き」から入ったんですね(笑)。実際に入ってみてどうでしたか?
A
周りの人たちがとにかく優秀で驚きました。当時は「ホームページからWebへ」という時代の転換期だったので、武器になる職能を手に入れようと強い意志で入ってきた社会人の方も多くて、みんなモチベーションは高かったですね。ちゃんとしている人が多いのに、僕はギャル男じゃないですか(笑)。最初は怖がられたんですけど、人懐っこい性格だったせいか周りからすごくかわいがってもらいましたね。自分にとってはMySQLとかPHPとか「宇宙語か!?」と思うくらい難解でしたし、当時は徹夜で掛け持ちのアルバイトをしながら通っていたので、授業中に先生に自己申告して寝ていることも多かったですけど(笑)、デザインは面白かったですし、結局最後まで辞めないで卒業することができました。
Q
それから、Web制作の仕事をされるようになったんですか?
A
卒業してから300社くらい面接を受けたんですけど、全部落ちたんですよね。当時は常にハーパン、サンダル、ピアスみたいな格好だったので、見た目で無理という感じだったんでしょうけど(笑)、さすがに驚きました。自分ってこんなに市場価値がないんだって。そんな最中にデジタルハリウッドのスタッフの方が、「今度、キノトロープという会社の集団面接があるから行ってみない?」と声をかけてくれて。それが、最初のWeb制作会社に入社するきっかけとなりました。

「デジタルハリウッド」が挑戦を続ける人生への転機となった

Q
Web制作の草分け的会社だと思うのですが、採用の決め手はなんだったのでしょうか。
A
面接が始まってすぐに社長から「お前帰っていいよ」って言われたんです(笑)。でも、休憩時間の喫煙所で「俺、もうちょっと喋りたかったんですけど」と直談判したら、次の週に合格通知が来ました。入社してからは大変でしたね。僕はデザイナーとして入ったつもりだったんですけど、「お前にデザイナーなんてできるわけないだろ」って、毎日水槽掃除をさせられてました。社長の付き人みたいな感じで……僕はそういうの全然平気だったんですけど、後輩にどんどん抜かされているのに焦りを感じて、頭下げて本来のWeb制作の仕事をやらせてくださいってお願いしたんですよね。でも任されるのは、朝までに4000部資料をコピーするみたいな、嫌な仕事。でも優秀な人たちとの差を埋めるには尋常じゃない努力は覚悟しなければいけないと思ったので、全部食らいついていったら、「小野里は面白い」と評価されるようになって。だんだん仕事を任せてもらえるようになり、25歳で部長という異例の昇進することができました。
Q
その後独立されて、株式会社バニッシュ・スタンダードを立ち上げられた小野里さん。その当時も、相当苦労されたそうですね。
A
人生で一番きつかった時期かもしれないですね。当初はECサイトの受託開発をしていたんですけど、仕事量が多すぎて、開発が間に合わないんですよ。お客様にとってECサイトが動かないということは、イコール売り上げが立たないということになるので、ものすごい損害なわけです。最大で一年半、会社に寝泊まりしながら、寝ないで仕事をしました。仲間がどんどん去っていって、損失を補うためにどんどん借金も膨らんでいって……。信用もないのでだんだんとお金が借りられなくなるわけですけど、会社が潰れる間際にギリギリでお金を借りることができて生き延びることができました。この時の経験は経営者として勉強になることが多々ありましたが、当時の仲間たちには本当に申し訳ないと思っています。
Q
その苦境の末に「STAFF START」を立ち上げられることになるのですが、どんな過酷な状況でもめげない姿勢というのは、小野里さんの一つの才能かもしれませんね。
A
そうですね。僕なんか根はずっと変わっていなくて、いまバニッシュ・スタンダードの社長じゃなかったら相当痛い奴だと我ながら思うんですけど(笑)、そんな出来損ないの自分でも挑戦を続けていたらプチ成功はできた。これからもっと大きな成功をしなければいけないので引き続き一生懸命やってますけど、いま「自分は人よりできない」と悩んでいる人も、人生わからないもんで、挑戦を続ければ努力が実を結んだり、縁が何かを引き寄せてくれたりすることはあると思うので、ぜひ挑戦を続けてほしいです。その挑戦するきっかけを与えてくれたのが、僕にとってはデジタルハリウッドだったんですけどね。

根本にあるのは「本当に困っている人を助けたい」という気持ち

Q
デジタルハリウッドは“Entertainment. It’s Everything!”(すべてをエンタテインメントにする!)という理念を掲げています。「Entertainment」には人をもてなすという意味も含まれているようなのですが、何か共感されることはありますか。
A
とても共感しますね。僕は売り上げを上げることよりも、「この世の中をよくする仕事をしたい」「本当に困っている人を助けたい」ということを考えちゃうタイプなんですよ。自分の能力や経歴を誇示するよりも、その能力を使ってこれから先、どうやって世の中に貢献していけるか考えることが大事だと思うし、それこそが僕は生きた証だと思う。とはいえ人様に手を差し伸べるためには、まず自分たち社員が幸せでなくちゃいけない。そのためには利益を生み出すことは大事だし、その辺りのバランスをうまく取りながら組織を作っていくことが、経営者としての僕の課題でもありますね。

小野里寧晃さんが学んだコースはこちら↓↓
デジタルハリウッド(専門スクール)STUDIO 渋谷
※当時とは立地・コース等が変更されています

株式会社バニッシュ・スタンダード 代表取締役CEO
小野里寧晃さん(デジタルハリウッド渋谷校 修了)
1982年10月24日群馬県前橋市生まれ。2004年大手Web制作会社に入社、EC事業部長として主にアパレル企業などのECサイト制作に従事。2011年株式会社バニッシュ・スタンダードを設立。EC構築から運営の全てを請け負うフルフィルメント事業を提供する中で「店舗を存続するEC」を目指し、2016年に店舗スタッフをDX化させる“スタッフテック”サービス「STAFF START(スタッフスタート)」を立ち上げる。

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