Interviewインタビュー

No.10

公開日:2017/06/28  取材日:2017/05

3Dプリンタでオリジナルトロフィーを制作、デジハリ大の「LabProto(ラボプロト)」なら、思い描いたイメージを形にできる!

在校生 デジタルハリウッド大学

No.10

金刺 龍賢さん(デジタルハリウッド大学4年生)

デジタルハリウッド大学4年生 金刺龍賢さんの写真 その1

このインタビューは2017年5月当時の内容です。

ゲームを作りたくてデジハリ大に入学 3DCGを中心に学んでいます

――金刺さんは、デジタルハリウッド(以下、デジハリ)最大のイベント「DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2017」で授与されるトロフィーを制作したそうですね。そのお話をうかがう前に、まず金刺さん自身についてお聞かせてください。現在デジハリ大4年生ですが、どんな勉強をしているのでしょうか。

3DCGを中心に学んでいます。黑田順子教授のゼミで、ゼミ長を務めています。

――デジハリ大に入学したのも、CGを学びたかったから?

ゲームを作りたくて入学しました。プログラミングを学ぶか、3DCGにするか迷いましたが、授業説明会を聞いてCGに興味を惹かれました。経験はありませんでしたが、思い切って始めてみました。

――ゲームはどんなジャンルがお好きですか?

最初はRPGから入り、そこからいろいろなジャンルに興味が広がって。最終的に、自分はゲームそのものが好きなんだと気づきました(笑)。
最近は簡単なゲームも増えていますが、遊びごたえがあるほうが好きなのでフロム・ソフトウェアのゲームを好んでプレイします。

――3DCGを学ぶ楽しさは、どこにあるのでしょう。

自分が頭の中で思い描いたものを、可視化、具現化できることです。これまではモニタの中だけでCGを描いてきましたが、3Dプリンタを使えば現実にもなります。思ったものをそのまま形にできるのが楽しいですね。

デジタルハリウッド大学4年生 金刺龍賢さんが3Dプリンタで制作したトロフィーの写真 その1

3DCGのノウハウを活かし、3Dプリンタでトロフィーを制作

――4月に開催された「DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2017」では、金刺さんが3Dプリンタで制作したトロフィーが授与されたそうです。そもそも、このトロフィーを制作することになったきっかけは?

杉山学長先生から黑田先生に「トロフィーのデザインを学生に任せようと思うが、誰かできそうな人はいないか」とご相談があったそうです。そこから僕に声がかかりました。

――どのような流れで制作していったのでしょう。

まず、黑田先生と一緒に学長室を訪れ、3人でデザインや素材について話し合いをしました。もともと学長先生の頭の中にはイメージがあったので、それを伝えていただいて。話しながらラフスケッチを描き、その場でビルドしていきました。最終的には違う形になりましたが。

――杉山学長から伝えられたコンセプトは、どのようなものでしたか?

最初は「シンプルでカッコよく」とうかがっていました。その後、僕がデザイン案を10パターンほど作成して学長先生と黑田先生にお見せしたところ、「これはいい、3Dプリンタでしか作れない形だ」と有機的な形を気に入ってくださって。その時にご提案したいくつかの案を組み合わせて、デザインを決めました。

――有機的な形とは、どんなものでしょう。

ゴツゴツした形です。最初に考えていたデザインは先端が丸かったのですが、「このゴツゴツ感がいい」と。デジハリのロゴを穴抜きしたことも、評価してくださいました。金属などの素材を切り出して穴を抜くのは難しいですが、3Dプリンタなら可能です。最終的に、3Dプリンタならではのデザインになりました。

――そこから実制作に入っていくわけですよね。利用したのは、デジハリ大の4Fにあるファブ工房「LabProto(ラボプロト)」だそうです。3Dプリンタを扱うのは、今回が初めてでしたか?

そうです。興味はありましたが、使ったことはありませんでした。

――金刺さんは3DCGの勉強はされていますが、それまでに習得したスキルで3Dプリンタを扱えるのでしょうか。

モデリングまでは、これまでデジハリ大で教わってきた知識で問題なくできました。使用したのは「Maya」という3DCGソフトです。
ただし、CGをプリントアウトするための知識は、新しく勉強しました。ゴミを取ったり、サイズをミリ単位で測ったりするために「Fusion360」というソフトの使い方を覚えました。
必要なソフトはすでに大学にそろっていたので、デジハリ大のリソースだけで十分対応できました。始めようと思えば、誰でも始められる環境です。

――3DCGには重力がかかりません。モデリングを実際にプリントしたら、立たなかった……ということはありませんでしたか?

「Maya」は重力を設定できるので、そこで試してみました。
でも、最初にデザインを考えた時には、立つ/立たないは考えていませんでしたね。デザイン案が固まりはじめてから「この形で立つだろうか」と検討していきました。
モニタの中だけでCGをモデリングしていた時にはなかった考え方でした。

――やはりフィジカルなモノを作るとなると、CGのモデリングとは考え方が違ってくるのでしょうか?

CGはごまかしが効くんです。拡大縮小も自由ですし、本当なら立たない形でもモニタの中なら立たせることができます。でも、実際にモノを作るとなるとごまかしが効きません。その点は意識しました。

――特に苦労したのは、どんな点でしょうか。

けっこう作り直したんですよね。立たない、中央部が細くなっているのでグラグラするなどの問題があって。それに、当初はもっとパーツが多かったんです。台座も3Dプリンタで作ろうと思い、トロフィーの裏に突起をつけて台座に穴にはまるようにしようと考えていました。
でも、実際に作ってみるとうまくくっつかなくて。CG上ではピタッとくっつくのですが、プラスチックのような素材を熱で溶かすのでどうしても凹凸が出てしまってうまくハマらないんです。
最終的に台座はつけず、パーツも上下の2つにしました。

――何回ぐらい試作を重ねたのでしょう。

プリントアウトしたのは3、4回です。
でも、データの修整は数えきれないほどやりました。

――プリントアウト中に、「これはうまく行かないな」とわかっても最後まで出力するんですか?

そうですね。刷ってみないとわからないことも多いので。実物を見ると「バランスはいいけれど、ここは改良する必要があるな」とわかるんです。
ただ、素材が高価なのでもったいないなと思いましたが(笑)。
でも、CG上で見るのと現実に刷り上がったものを比べると、びっくりするほど差が出るんです。

――何が違うのでしょう。

CG上では、滑らかできれいに見えるんです。でも、実際に刷り上がったものは、意外とザラザラゴツゴツしているんですね。プラスチックのモール(紐状の素材)を熱で溶かして何層にも重ねていくので、どうしても表面がザラザラします。それに、ポリゴンの線も浮き出てけっこう目立つんです。できるだけ形が崩れないようCG上でもポリゴンを細かくしますが、それでもプリントしてみないとわからないことはたくさんありました。

――ロゴの穴抜きも、とてもきれいに仕上がっていますね。

いちばん苦労したのは、ロゴかもしれません。実はこれ、デジハリのロゴの正しい比率ではないんです。ロゴは平面的なので、そのまま曲面にするときれいに見えないんです。

――立体になった時にも違和感のないよう、ロゴデータを調整したのでしょうか。

そうですね。「Adobe Illustrator」でパスを歪めて、立体にするとどう見えるのか検証しました。線の太さや丸の大きさも少しいじっています。あとは、ロゴのゴツゴツしたところを貫通するので、全体のデザインとのバランスも難しかったですね。

デジタルハリウッド大学4年生 金刺龍賢さんが3Dプリンタで制作したトロフィーの写真 その2

作ったものを自分の手に持てるというのは、今までにない感覚

――制作期間はどれぐらいでしたか?

2カ月弱です。でも、実際に作業したのは10日程度でした。学長先生とお話した時間は別ですが、実作業は2週間かかっていないと思います。

――え、そんなに短期間でできるんですね。最初に刷り上がったものを見た時には、どんな気持ちでしたか?

感動しました! すごくドキドキしました。作ったものを自分の手に持てるというのは、今までにない感覚でうれしかったです。

――ここに注目してほしいというこだわりのポイントは?

いや、そんなにないんです(笑)。自分自身が楽しみながら作っていたので。全体的にゴツゴツしている感じが伝わればうれしいですね。ゴツゴツしながらも、らせんを描くように上に伸びていくようなイメージを意識しました。
今回はプラスチックのようなモールを使いましたが、いろいろな素材で作ってみたいですし、色もつけてみたいなと思いました。

デジタルハリウッド大学4年生 金刺龍賢さんの写真 その2

在学生や卒業生なら無料で使える!創造力を刺激する「LabProto(ラボプロト)」

――では、デジハリ大のファブ工房「LabProto(ラボプロト)」についておうかがいします。
今回は3Dプリンタを使いましたが、ラボには他にもさまざまな機器がそろっています。この設備について、どんな印象を受けましたか?

ラボを利用したのは初めてでしたが、すごく面白いですよね。個人的には、レーザーカッターが気になりました。紙はもちろん木にもいろいろなデザインができるので、ポートフォリオや卒業制作にも利用できそうです。実際に使ってみた同級生に話を聞いたら、「使う前に比べてデザインが楽しくなったし、作れるものの幅が広がった。発想がいろいろ浮かんでくる」と話していました。僕もぜひ使ってみたいです。

――「こんな機材があるなら、こんなものも作れる」と、広がりが出ますよね。

ラボの中にある機材だけでも、「これとこれを組み合わせたらこんなものが作れそう」といろいろなアイデアが浮かびます。利用しないのはもったいないと思います。

――学生だけはなく、卒業生も使えるんですよね。利用料も無料だそうです。

材料の実費はかかりますが、他の場所で作るよりも断然安いです。学生は、絶対に今のうちにやっておいたほうがいいと思います。そもそも3Dプリントの技術を習得したくても、大学に設備がなければできませんよね。ソフトを使ってデータだけは作れても、それが本当にプリントできるデータなのかは誰にもわかりません。どこか別の施設で作るにしても、コストがかかりすぎて学生には手が出ません。デジハリ大ならソフトも機材もそろっていますから、やらない手はないと思います。
でも、ラボの存在自体を知らない同級生もいるんですよね。「どこでやってるの?」と聞かれることも多くて。説明会などみんなに知ってもらう機会をもっと増やすと、興味を持つ人も増えるのではないかと思いました。

――このインタビューを機に、ラボの利用者が増えてくれるとうれしいです。

使うかどうかは別として、まずはどういう設備があるのか、どういうものを作れるのか見学することをおすすめします。実際にものを見ると、技術のある人は食いつくはず。「こんなものを作れるならCGを勉強しようかな」という、ひとつのきっかけにもなると思います。僕自身、CGを始めたのは先輩の作品を見たのがきっかけです。同じように、ラボを訪れることが一歩を踏み出すきっかけになるはず。やってみれば楽しいということを、ぜひわかってもらいたいです。

――今回は依頼を受けてトロフィーを作りましたが、今後他のものを作ってみたいと思いましたか?

そうですね。余力があれば、卒業制作もプリントしたいという欲が出てきました。せっかくできるようになったので、これからも3Dプリンタを活用していきたいです。

――どんなものを作ってみたいですか?

ロボットを作ってみたいです。プリントアウトした時に、ちゃんと立つように作りたいです。それを卒業制作として展示できたらいいですよね。
これまでは平面でしかプリントできませんでしたが、3Dプリンタは3次元でプリントアウトできます。いろいろな色のモールがあるので、カラフルなものも作れます。使う人の発想次第で、いろいろな趣味に活かせると思うんです。アクセサリも作ってみたいし、凹凸のあるポスターを刷るのも面白いなと思います。

デジハリ大のファブ工房「LabProto(ラボプロト)」の写真 その1

3Dプリント、今覚えておくと面白い体験ができるのでは

――可能性が広がりますね。

なんでもできますよね。可能性の上限はないと思います。今、カメラで360度映すとモニタ上にモデルを映し出すこともできるんですよね。人をぐるっと映してスキャンすれば、その人そっくりのフィギュアも作れます。モデリングというと難しく聞こえますが、こうした技術を使えば一般の方でもソフトを使わずに3DCGを作れます。
環境が整えば、誰でも3Dプリントができる時代が来ると思います。一般家庭に3Dプリンタが普及すれば、データ配信で好きなものを刷れるようになるかもしれません。そうなると、また新しいビジネスが生まれそうですよね。

――デジハリ大にこうした設備があることのメリットは?

発想が広がると思います。CGの中だけではわからないことってたくさんあるんです。現実に作ったら見え方が違うんじゃないかと考えながら、CGデータを作れるようになるので、制作物のリアリティも変わってくると思います。
それに、いろいろな人や企業とのコラボレーションも広がるはず。今までは3DCGを学んでもゲームや映像しか作れませんでした。でも、3Dプリンタを活用すれば、モノのデザインもできるようになります。絵を描く人とコラボして、それを立体物としてプリントアウトすることもできます。道はどんどん拓けていくと思います。まだまだ伸びる業界だと思うので、今覚えておくと面白い体験ができるのではないでしょうか。

インタビュー : 野本由起

金刺 龍賢さん(デジタルハリウッド大学大学生)

3DCGを中心に学ぶデジタルハリウッド大学4年生。現在、黑田ゼミでゼミ長を務めている。杉山知之学長より「DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2017」で授与されるトロフィーのデザインを依頼され、学内ファブ工房「LabProto(ラボプロト)」の3Dプリンタで制作。卒業後はゲームメーカーへの就職を希望している。

デジハリ大のファブ工房「LabProto(ラボプロト)」の写真 その2

ファブ工房「LabProto(ラボプロト)」とは

デジタルハリウッド大学の産学官連携センターは、2016年12月にプロトタイピングのためのファブ工房「LabProto(ラボプロト)」を開設しました。「LabProto」は3Dプリンタ、UVプリンタ、レーザーカッター等のデジタルファブリケーション機材等を備え、プロトタイピングと、グラフィック系制作の仕上げができる場所として学生、卒業生に開放しています。ぜひ見学にいらしてください。
【参考】デジタルハリウッド大学にプロトタイピングのためのファブ工房「LabProto(ラボプロト)」が開設
東京都千代田区神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ アカデミア 4F
お問合せ:0120-823-422

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