No.13
Webデザイナー/Grow spotプロデューサー
亀井 智子さん(デジタルハリウッド卒業)
このインタビューは2018年9月当時の内容です。
デジハリ受講中に第三子を妊娠 卒業後はフリーランスに転身
- Q
- デジタルハリウッドを受講されたきっかけを教えてください。
- A
- もともと化粧品会社の楽天ショップ店長をしていたんです。仕事上、PhotoshopやIllustratorを使う機会があり、独学で学んだものの技術に限界を感じていて……。会社の支援で学べることになったので、2015年にデジタルハリウッドに入学しました。受講期間は6ヵ月間。Webデザイナー専攻にバナー制作実践講座のコースをつけました。
- Q
- 本格的に学ぶのは初めてですよね。いかがでしたか?
- A
- 今までの謎が解けていく感じでした。それまでは「これ、どうしたらいいんだろう」と自分ではわからないことが多くて。ネットで情報を集めても、なかなか理解できなかったんです。それが、「こういうことだったのか!」とひとつひとつ解決されていくのが楽しかったですね。特にIllustratorのパスの使い方、画像加工は勉強になりました。
- Q
- 在学中に3人目のお子さんの妊娠がわかったとか。受講に支障はありませんでしたか?
- A
- 仕事もしていたので、つわりの時期は2ヵ月ほどデジハリをお休みしていました。でも、自宅でも動画は見られますよね。スタジオには行かず、体調がいい時に頑張って動画を見ていました。
- Q
- 上にふたりのお子さんがいて、仕事をして、勉強もして……となると大変だったのでは?
- A
- 子育てと仕事をしたうえで、プラスαで勉強しようとすると明らかに時間が足りません。いかに時間を作るかが大変でした。でも、学ぶことが楽しくて、気持ち的にはもっともっと勉強したいと思っていました。大変というよりは、どうやって時間を作ろうかなという楽しみのほうが大きかったですね。
- Q
- デジハリを卒業してからの活動について教えてください。
- A
- 3人目の妊娠がわかり、これからの仕事をどうしようかと考えていた時、デジハリと提携しているクリエイターズマッチの試験に合格し、バナー制作のお仕事をいただけるようになりました。「これならフリーランスの道も行けるぞ」と、卒業のタイミングから思い切ってフリーになりました。
- Q
- 一大決心だったのでは?
- A
- 確かにそうですが、会社勤めをしている時から「自分ひとりで何かしたい」と考えていたので。「今だ!」と思い、その波に乗りました(笑)。
- Q
- 実際フリーになってみて、いかがでしたか?
- A
- 私には向いていました。大変な面もありますが、私は組織の中で動くより、自分で考えて、失敗しても成功しても自分自身で納得するほうが合っているようです。
- Q
- フリーになってからのお仕事は?
- A
- デジハリ卒業後は、クリエイターズマッチとランサーズでお仕事をいただいていました。出産ギリギリまで仕事をしていました。
- Q
- クラウドソーシングを利用すれば、地方在住でも問題なくお仕事ができましたか?
- A
- 定期的にお仕事をいただけるクライアントと知り合うことができたので、ラッキーでした。
- Q
- みなさん、そういったクライアントと出会わずに苦労されています。なにかコツはあるのでしょうか。
- A
- 最初に「制作実績を見せてほしい」と言われたので、楽天ショップの店長をしていた時に作った画像などをすべて提出しました。「まず試しに」ということで始めた最初の1件は、やりとりがとても大変でした。でも「意地でもやり通す!」と思い、寝ずに頑張りました(笑)。
- Q
- 当時は妊娠中ですよね。体調に不安はありませんでしたか?
- A
- 1人目だったら無理だったと思います。3人目という余裕があったので、頑張れたのかもしれません。「頑張ればできるかもしれない」という思いもありましたし、「絶対にやりたい!」という気持ちもありました。せっかくつかんだ流れを止めたくないという思いが強かったですね。
- Q
- 出産後のお仕事状況について教えてください。
- A
- 出産時に2ヵ月ほど休みましたが、働きたくて仕方ありませんでした(笑)。子どもを保育園に預けることができたので、2ヵ月で仕事に復帰しました。そのタイミングで、デジハリ卒業生で構成された「米子コンテンツ工場」にも入りました。
- Q
- 「米子コンテンツ工場」ではどんな活動をされているのでしょうか。
- A
- 「米子コンテンツ工場」は、フリーランスのクリエイターがチームで仕事をする場なんです。ひとりでは受けられないような大きい案件も、みんなで協力して請けています。印刷物やチラシを作ったり、Webサイトをデザインしたりすることが多いですね。フリーペーパーも発行しているので、そのディレクターもしていました。
- Q
- 今までのお仕事とは違いがありましたか?
- A
- クライアントと会って話をする機会も増えたため、生活がガラッと変わりました。出産前は、自宅のPCを使って東京の企業とやりとりをしていましたが、じかにお客様と会ったり、打ち合わせをしたりしながら制作する生活になりました。
- Q
- 亀井さん、そういうの得意そうですね。
- A
- 好きです(笑)。
- Q
- 「米子コンテンツ工場」のような場があるのも、デジハリのメリットではないかと思います。
- A
- とても助かりました。いろいろな環境に置かせていただくことで、自分に何ができるのか、何が苦手で何が得意なのかがわかるようになりました。私の場合、人と会ったり外に出たりする機会が増えたことで、「もっと制作をしたい」「もっと技術を磨きたい」という方向に変わっていきました。そこで、デジハリともつながりのあるデザイン会社で働くことにしました。
- Q
- そこではどのようなことを?
- A
- グラフィックの仕事をしていました。ポスターやチラシなど、あらゆる印刷物のデザインをさせていただき、半年ほど勉強させてもらっていました。修業です(笑)。
商店街にオフィスを設立 デジタルの力で町おこしを!
- Q
- デザイン会社での修業後は、どうされたのでしょうか。
- A
- 以前、夫の父親が地元の商店街で学生服の店を開いていたんです。店はすでに閉めていましたが、場所だけは残っていたので「もったいないから何かしたいな」と思って。商店街の2軒先にWebのコーダーをしている同級生がいたので、彼女と一緒に「何かしよう!」ということになり、この場所にオフィスを構えることにしました。そこで学生服の店を改装し、ここを基盤に自分で動いていくことにしたんです。
- Q
- お仕事内容も変わったのでしょうか。
- A
- 場所を作ったとはいえ仕事が変わったわけではなく、もともとのつながりや知り合いのお仕事を続けています。今は、Webサイトの制作とクリエイターズマッチのバナーの仕事が半々ぐらいです。
- Q
- 場所を作ったことで、人との交流も増えそうです。
- A
- 確かに交流は増えています。今、商店街がシャッターで締まっていて寂しい状態なんです。私はこの近所で育ったので、「もっと栄えさせたい」という思いがありました。今は地元の人々と交流を深め、仕事をしながら地域とのかかわりにも力を入れています。
- Q
- 以前と比べて、商店街はどれぐらい変化したのでしょうか。
- A
- 私が見てきた全盛期が100だとすると、今は10ぐらい。一番の原因は高齢化ですね。店の後継ぎがいなくて、その場所に今も住んではいるけれど店は閉めたという方が多いんです。
- Q
- 地域活性化のために取り組んでいることは?
- A
- Webサイトの制作をはじめ、デジタルで町おこしにどう関わっていくか考えているところです。すでにホームページを制作し、これから充実させ、きれいに整えていく予定です。
改めて店舗の方に取材をしたり、写真を撮り直したりして、新しい情報に更新できたらいいなと考えています。InstagramやFacebookでの情報発信もしていきたいですね。
- Q
- 商店街の理想像、夢は?
- A
- 商店街には駐車場がないので、電車で移動するような若い人たちや学生がターゲットです。「休日は商店街だよね」と、若い人たちが集まる場所になったらうれしいですね。Instagramなどで興味を持ってもらったり、「ここで何かしたいな」「一緒に町おこしをしたいな」と思ってもらったりするよう、PRしていきたいです。
- Q
- 今後、オフィスを拠点にどのように活動を広げていきたいですか?
- A
- 会社のような組織にするのではなく、フリーランス同士でつながりを作れたらと思います。地元のカメラマンなどもいるので、クリエイターの横のつながりを増やしていきたいです。
仕事と子育ての両立には、「仕方ない」と納得することが重要
- Q
- 3人のお子さんがいて、仕事をして、町おこしにも関わっているわけですね。タイムマネジメントが大変なのではないかと思います。
- A
- 自分でもうまくできているとは思いません。でも、集中しないといけない時間にしっかり集中すること、必要のない時間をかけないことが大事だと思っています。不要な時間をいかに短縮するか、常に考えています。
- Q
- 1日のスケジュールは?
- A
- 朝6時に起きて8時半には子どもを送り出します。10時に仕事をスタートさせるために、それまでに家のことを片づけて。それから10時から18時まで仕事をして、18時30分までに子どもを迎えに行きます。その時に買い物をしたり、家にある冷凍ものを使ったりして夕ご飯です。22時頃までは家事をして、そのまま寝ることもあれば深夜12時、1時まで仕事をすることもあります。
- Q
- お子さんは今、おいくつですか?
- A
- 上から12歳、5歳、2歳です。下の子が2歳になり、ようやく最近少し楽になりました。少し前まではぐずることも多かったのですが、自分ひとりで遊べるようになったので。
- Q
- デジハリ卒業生・在学生にも、育児と仕事を両立させようと頑張っている方が大勢いらっしゃいます。何かアドバイスはありますか?
- A
- 私の場合、「仕方ない」ということを理解するようにしています。子どもが泣いた時も「もう大変!」とならずに、「今は泣く時間だから仕方ない。他のことはやめておこう」と考える。その時間、「他のことができなくて苦しい」と思わず、「仕方ない」と納得して「それはそれでできることをしよう」と頭を切り替えるんです。そのモチベーションの転換が大事なのかなと思います。子育てをするうちに、徐々にそういう頭になっていきました。
- Q
- なんでもやろうとすると「キーッ!」となりますからね。
- A
- そうなんです。だから「仕方ない!」って。「今はできない時間」と思うようにしています。その分、できる時に集中してやる。それを自由に調整できるのがフリーランスの魅力でもあると思います。
- Q
- お話を聞いていると、亀井さんはとてもエネルギッシュですよね。そのパワーは、どこから生まれているのでしょうか。
- A
- 私は、20歳で1人目の子どもを産んでいるんです。周りのみんなが遊んでいる時に子育てをしていたので、我慢することも多くて。思いっきり仕事をする前に子育てをした分、その反動が来ているのだと思います(笑)。やりたくて仕方なかった気持ちが、今発散されているのかもしれませんね。
失敗しても必ず次につながる 「迷わずやる!」が私のポリシー
- Q
- お仕事をするうえでのモットー、大切にしていることをお聞かせください。
- A
- 仕事をするうえで、いちばんうれしいのは「ありがとう」と言ってもらえることです。途中でどんなに失敗があったとしても、最終的に「亀井さんに頼んでよかった」と言ってもらえる仕事をできるように心がけています。
- Q
- そのためには、クライアントの意向をしっかり汲む必要がありますよね。
- A
- ですから、会える方とは直接お会いし、何度も打ち合わせをするようにしています。「何時間までしか話はしません」というのではなく、不安要素があればとことん聞きますし、「こうしたい」という要望があれば、それをいかに表現するか考えるようにしています。
- Q
- 今までのお仕事で、亀井さんが「うまくいった!」と思う案件は?
- A
- 大山にある芝刈りや除雪をする企業から依頼を受け、ホームページを作ったんです。それを見た東京のテレビ局が、取材に来たそうです。後日「どこに取材するか決める際、ホームページが良かったのでこの会社に決めたらしいよ」と言われました。それはすごくうれしかったですね。会社の魅力を伝えるという目的が果たせたのだとしたら、とても光栄です。
- Q
- お仕事のうえで、次に挑戦したいことを教えてください。
- A
- Webサイト制作を発展させて、ECサイトをブランディング、コーディネイトできるようになりたいと思っています。「ネットで売るならここに相談したらいいよ」と言われる場所になれたらうれしいです。マーケティングもわかったうえで新しい提案ができるデザイナーになれれば、と思います。
そのためにも、まずは自分でECサイトを運営してみたいですね。例えば商店街の店舗だけで売っているものをサイトで販売し、失敗も成功も全部自分で試してみたいんです。ちゃんと自分で経験している人の言葉は、信じられるじゃないですか。そのための経験を重ねたいと思っています。もともと義父が扱っていた学生服も、今年の冬から売り出そうかなと考えているんです。まだ取引先やルートとつながりがあるので、そこも新しく発展させられたらと思っています。
- Q
- 10年後、亀井さんは何をしていると思いますか?
- A
- この商店街に人が増えて、その中心にオフィスがある、となっていたらうれしいですね。
- Q
- このインタビューを読んでいる方に向け、伝えたいことはありますか?
- A
- 自分で動き出さないと、いろいろなものをつかめないと思うんです。迷ったり悩んだりしている間に、他の人に運が回っていってしまうかもしれません。やるかやらないか迷っているなら、やったほうがいい! 失敗しても無駄にはならず、必ず次につながりますから。「迷わずやる!」と言いたいですね。
インタビュー:野本由起
Webデザイナー/Grow spotプロデューサー
亀井 智子さん(デジタルハリウッド卒業)
鳥取県米子市在住のフリーランスWebデザイナー。デジタルハリウッドSTUDIO米子卒業。地域を活性化するため、商店街にデザインオフィス「Grow spot」を構え、クリエイターの拠点とすべく活動中。3児の母でもある。