Interviewインタビュー

No.43

公開日:2021/08/26 

デジタルハリウッドの集合知「FLOW DHU」が目指す新たな”創発”

代表取締役動画クリエイター教授 デジタルハリウッド大学

No.43

<画像右>
株式会社キッズプレート 代表取締役
茂出木 謙太郎さん(デジタルハリウッド大学大学院 修了 / デジタルハリウッド大学 准教授)

<画像中央>
セツナクリエイション合同会社 代表取締役
藤吉 香帆さん(デジタルハリウッド大学 卒業 / デジタルハリウッド大学大学院 在学中)

<画像左>
デジタルハリウッド株式会社 大学事業部 執行役員 / デジタルハリウッド大学 事務局長
池谷 和浩さん

ハリウッド映画産業では、プロジェクトごとにさまざまな分野のプロフェッショナルが集まってチームを組んでは、新たなプロジェクトへ向けて離散します。それぞれの分野を横断したコミュニケーションによって創発性が発揮される働き方であり、デジタルハリウッドではこれを「ハリウッドワークスタイル」として提唱しています。

今回紹介するのは、そのスタイルをデジタルハリウッドの卒業生・修了生を中心としたメンバーで実現している「FLOW DHU」プロジェクト。「FLOW DHU」とは、24時間365日YouTubeで配信を続けているライブストリーム動画です。

▼YouTube channel 「FLOW DHU」
https://www.youtube.com/channel/UCKcavyfJVvvjXxr9NC3LxsQ

Chill Hiphopを聴きながら作業に取り組むワークスタイルを提案するために、デジタルハリウッド大学大学院(以下:DHGS)10期生の神成 大樹(かんなり だいき)さん、DHGS12期生の茂出木 謙太郎(もでき けんたろう)さん、DHGS15期生の薫人(まさひと)さん、DHGS16期生でありデジタルハリウッド大学出身の藤吉 香帆(ふじよし かほ)さん、そして大学事業部 執行役員の池谷 和浩(いけたに かずひろ)さんが集結し、制作を行いました。

今回は制作に携わった5名の中から、茂出木さん・藤吉さん・池谷さんにお集まりいただき、「FLOW DHU」とはいったい何なのか、デジタルハリウッドの卒業生・修了生ならではのプロダクト開発の魅力などをお話しいただきました。
(※このインタビューは、2021年7月当時の内容です。)

作品を軸に人と人がつながるコミュニティ

Q
「FLOW DHU」プロジェクトはどなたが発起人でしたか。
A
茂出木:僕と池谷さんです。24時間365日ずっとそこにあって、その場所に人が集まりチャットでゆるくつながる。最初はそんなカルチャーに惹かれ、僕が衝動的に配信システムを作ってみようと思ったんですよね。明確な目的や目標があったわけではなく、面白そうだからやってみようという感じです。

作り方を調べてみたらこれは意外と簡単にできそうだと思って、デモを完成させました。できあがったプロダクトの良さをきっとわかってくれると思い池谷さんに自慢してみたのが、FLOW DHUの始まりです。

池谷:年の瀬でしたかね。茂出木さんから「こんなの作ってみたよ」とメッセージが届きました。24時間配信のライブストリーム動画に関する知識はほとんどなかったので、正直最初は何のことだか分からなかったんですよ。

茂出木:年末でしたよね。説明もきちんとせずに見せて申し訳なかったです(笑)。

池谷:このシステムがどんなものなのか話を聞いていくうちにライブストリームという文化の面白さがわかり始めてきて、作品として公開したいと思ったんです。

すると、この人とだったら良いものが作れそうだ、とデジタルハリウッドの卒業生や修了生の顔がポンポン思い浮かんできて。藤吉さん、神成さん、薫人さんに声をかけて、5人で制作することになりました。

Q
このプロジェクトに参加しようと思ったのは、どうしてでしょう。
A
藤吉:以前も一緒にお仕事をしたことがあり、池谷さんとの仕事は100%楽しいとわかっていたからです。インターネットの文化が大好きで、それにどう馴染みのある曲にするか、かつどんな新しいことができるのかを考えるのが楽しくて、池谷さんたちとなら良い作品が作れるという確信がありました。

茂出木:池谷さんは、たきつけてくれるんですよね。「どういうことですか?」「それ面白そうじゃないですか」と反応してくれて、プロダクトの見せがいがある。年末の仕事を忘れたい時期に何をやっているんだと反応する人は多いと思うんですけど、池谷さんはきちんと理解しようとしてくれるんです。

池谷:ありがたいですね。でも私も楽しんでいるので、全然迷惑だなんて思うことはないんですよ。いつでもこういった話ができる相手がいるのは、お互いにとって良いことだと思っています。

大事なデジタルハリウッドの卒業生や修了生が、作品を軸にそれぞれの専門性を持って活躍するプロジェクトは昔からやりたかったので、このプロジェクトはとても大切なものだと考えていて、私も夢中になっています。

プロダクト制作中に感じる「デジタルハリウッドならでは」

Q
普段と違うメンバーとの交流はいかがですか。
A
藤吉:年齢や役職関係なく意見を出し合うのはデジタルハリウッドだな、と感じます。DHUで色んなことを横断して勉強するように、皆さん分野を横断してクリエイティブな活動をしている人たちばかりだから、自分の担当外のことでもガンガンつっこむんですよね。むしろ担当なんてあってないようなもので、デジタルハリウッドらしいなと思いました。

池谷:ディレクションが得意な神成さんが作画をする薫人さんに意見したり、逆に薫人さんが「自分にはこういう意図があった」と議論をしたり、そこで別の人が混ざってきたり。みんなで良い作品を作っていこうという場面を、Slack上で何度も見ることができました。

茂出木:今回は一度も対面で会うことなくフルリモートだったので、それぞれの時間軸で作業をしていったんですよね。コメントが返ってくるのに時差があり、相手の時間を奪わずに非同期的に進められたので、自分の性に合っていました。

Q
普段とは違ったコミュニケーションはありましたか。
A
茂出木:ビジネスの場だと、上がそう言っているからそうしようという意思決定が起こりがちです。しかし、今回はみんなが作品ファーストで意見を出し合っていて、自分にとっては新鮮な現場でした。

藤吉:たしかに、この人に好かれるモノを作ればおしまいという仕事をする人は意外と多いと思います。でもそうではなく、今回はみんなが同じところから、同じ目線で純粋に作品の質を追求していけましたね。

池谷:僕の普段の仕事は、現場の仲間たちが各々の力を発揮できるよう演出していく立場。いわゆるゼネラルマネージャーで、一緒に何かを制作するという機会が少ないんです。だから同じ目線でひとつの作品を制作していく過程自体が新鮮でした。

作業に没頭するための装置、新たなクリエイティブの着火剤としての「FLOW DHU」

FLOW DHU

Q
今回のプロダクトのキモとなる音楽について、どんなところにこだわったかを教えてください。
A
藤吉:ノイズにならない、音楽が流れていることを忘れさせるようなプロダクトにすることを意識しました。私は普段インターネット広告を作っているのですが、自分が作ったモノが違和感がなく目や耳から入ってきて、気にならない状態になるのが理想的なんです。

映画やドラマなどは自分から主体的に時間を確保して視聴をすると思いますが、広告は何か別のことをしている最中に飛び込んでくる場面が多い。広告が邪魔にならないこと、不愉快ではないことなどを、普段の仕事では最低限クリアする必要があります。

今回の音楽制作も似ている部分があって、作業を阻害することなく作業している人を引き立たせることが大切になってくる。入り口では作業を開始するスイッチとして音楽が効いてくるけど、しだいに集中力が高まって周りの音が聞こえなくなるように。ヒップホップだけどラウンジミュージックのような楽曲を選びました。

池谷:プロダクトとしてはそのような狙いがありました。補足をすると「FLOW DHU」という空間が新たなクリエイティブの着火剤になることも狙いにしています。

Q
「FLOW DHU」というクリエイティブの影響で、また新たなクリエイティブが生まれていく。そうした循環を狙いにしているんですね。
A
池谷:そうですね。「FLOW DHU」の名前には、作業を没頭させ「フロー状態」(精力的に集中している感覚)になってほしいという意味や、「流れ」という意味でのフローなど、さまざまな意味を内包しています。「FLOW DHU」が新たな創作活動の源流になってほしい、そんな願いをこのプロジェクトに込めました。

茂出木:今回のプロジェクトを通じて、私の中にも良い流れが生まれていると思います。普段は身近な人をキャスティングしてプロダクトを作ることが多いのですが、自分の頭にはない人と一緒に創作することで、自分の会社とは全然違ったプロダクトができました。

僕自身モノづくりの初動は早いのですが、ある程度最初にやりたかったことを実現させると、継続できなくなってしまう人間なんです。でも今回は一緒にモノ作りをしたことがない人と仕事をする中で、「これがこうなるのか」「じゃあこんなこともできそうだよね」とどんどんやりたいことが溢れてくる。「FLOW DHU」によって創発を起こすというのを身をもって体感しています。

池谷:今回のプロジェクトは、僕と茂出木さんの雑談がベースとなって始まりました。このようにカジュアルな入り口でプロジェクトを開始して、ハリウッドワークスタイルが浸透していけば嬉しいですね。

「FLOW DHU」が生み出す新たなストリーム

Q
最後に、皆さんが考える「FLOW DHU」とは何かを教えてください。
A
池谷:「FLOW DHU」は、サービスとしてもプロジェクトとしても、デジタルハリウッドに関わる人たちが集まる新たなプラットフォームになると思っています。ここからデジタルハリウッド発のビジネスが生まれてくる源流になればと思い、続編も制作予定です。

藤吉:私はデジタルハリウッドの卒業生・修了生が世代を超え、こうして集まっていることを「FLOW DHU」を通して伝えたいです。

昔から友達と仕事を一緒にしたいなと思っていて、DHUの同期と会社を作りました。協力パートナーにも卒業生や修了生がたくさんいます。一緒に仕事をする人と友達のような関係のほうが、フラットに意見を言い合えるので仕事が楽しいんです。

「FLOW DHU」に関わったことのある人を増やして、どんどん身内化が進んでいけば、このコミュニティが職場や家庭とはまた別の居場所になるのではないかと思っています。

茂出木:たしかに、ここから新たな流れが生まれていけばいいですね。このプロジェクトに興味を持っていただいた方は、ぜひ連絡してください。

株式会社キッズプレート 代表取締役
茂出木 謙太郎さん(デジタルハリウッド大学大学院 修了 / デジタルハリウッド大学 准教授)

広告代理店やWeb制作会社を経て、2007年に株式会社キッズプレートを設立。デジタルハリウッド大学大学院卒業制作では、360度カメラ専用の遠隔操作ドリーを株式会社京商と共同開発した。デジタルハリウッド大学専任准教授としてVR / ARゼミの指導も担当。

https://twitter.com/k_modeki

セツナクリエイション合同会社 代表取締役
藤吉 香帆さん(デジタルハリウッド大学 卒業 / デジタルハリウッド大学大学院 在学中)

デジタルハリウッド大学卒業後、広告代理店にてプロモーション領域のプランニングを担当し、2019年よりフリーランスの動画クリエイターとして独立。翌年、セツナクリエイション合同会社を創設する。

https://twitter.com/kahofujiyoshi

デジタルハリウッド株式会社 大学事業部 執行役員 / デジタルハリウッド大学 事務局長
池谷 和浩さん

教育事業会社を数社経て、2007年にデジタルハリウッド株式会社に入社。事業統括、学発プロダクト開発、学発ベンチャーおよびアーティスト支援、カリキュラム・メイキング、テクノロジーカルチャー研究推進などを行っている。

https://twitter.com/iketanikazuhiro

「FLOW DHU」はクリエイティブな集中時間を応援します。作業や勉強のおともにどうぞ。
https://www.youtube.com/channel/UCKcavyfJVvvjXxr9NC3LxsQ

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