No.92

DotINK / GROUNDRIDDIM / 干支
3Dアーティスト
Daiki Miyamaさん
デジタルハリウッド大学 2018年卒業
デジタルハリウッドでは、2023年より毎年6月第4土曜日に卒業生が集まる「デジタルハリウッド校友会 ホームカミングデー」を開催しています。今年のキービジュアルを担当したのは、3Dアーティストとして活躍するDaiki Miyamaさん。YOASOBIのライブツアーキービジュアル、XGのリリックビデオなど音楽関連の仕事のほか、クリーチャーのモデリング、個人の作品制作など幅広く活躍している気鋭アーティストです。インタビューを通して、Miyamaさんの足跡、人となりに迫ります。
(※このインタビューは2025年3月当時のものです)
デジタルハリウッド大学で学んだチーム制作の楽しさ
──現在取り組んでいる仕事や活動について教えてください。
3Dアーティストとして、チームでCGイラストや映像、キャラクターなどを作りつつ、個人でも創作活動をしています。
──これまでどんな作品に携わってきましたか?
2024年に、YOASOBIライブツアーのキービジュアルを担当しました。他には、ガールズグループXGのリリックビデオを監督したり、CMなどの映像制作を手掛けたりしてきました。
YOASOBI Zepp Tour2024「POPOUT」キービジュアル
──そもそも3Dアーティストを目指そうと思ったきっかけは?
中学の頃から勉強はあまり得意ではなかったのですが、美術の成績は良くて。そこで、高校では美術科に進みました。
それに、もともと『ハリー・ポッター』や『スター・ウォーズ』のような映画も好きだったんです。大学説明会でCG映像を見て、水の表現やグリーンバックでのCG合成に感動しました。そこでCGを学びたいと思い、東京工芸大学に入学したのですが、CGを専門的に学べる大学ではなかったので2年通って中退。親に頭を下げて、デジタルハリウッド大学に入り直しました。
──3DCGは高度な知識とスキルが必要で、一度は3Dアーティストを目指しつつも諦めてしまう人も多い印象です。CGを本格的に学んだ感想はいかがでしたか?
東京工芸大学に通っていた頃から、「After Effects」というツールを使って、2Dモーションに奥行きを足した3Dに近い映像を作っていたんです。3DCGについて多少わかる状態で入学したので、ゼロからのスタートではありませんでした。むしろ、自分が一番うまいだろうと思っていたくらいです(笑)。ですから、難しさはありつつも、挫折するほどではありませんでした。
実際に入学してみると、高校時代から3DCGを作っている人やアメリカ帰りのすごく上手な人もいて。その影響を受けて、みんなで負けじと頑張っていました。ただ、やっぱり難しい分野ではあるので、僕が入っていたCGサークル「Mont Blanc」も、最初は何十人もいたメンバーが最終的には4人くらいに減っていましたね。今は学校に通わず、YouTubeで勉強する人もいるくらいですし、ツールの使い方も簡単になっていると思います。
──大学時代の印象的な出来事は?
3、4人のチームで、数分のCG映像を何度か作りました。コンテストに応募して、優勝はできなかったものの本選まで進んだこともあります。また、卒業制作はDIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2019 ベストCGアニメーション賞を受賞しました。一緒に手がけた田中(謙光)君とも仲が良くて。原案を田中君が、キャラクターデザインとモデリングを僕が担当して、後輩に背景を手伝ってもらいながら7、8人でCG映像を作りました。大変でしたけど、チーム制作の楽しさを知りました。
卒業制作「Radiate」
大学での人脈を生かしてキャリアアップ
──卒業後はすぐに3Dアーティストとして活動を始めたのでしょうか。
フリーランスで活躍しているデジタルハリウッドスクール卒業生の森田(悠揮)さんと仲が良くて、フィギュアメーカー・コトブキヤの仕事を紹介していただきました。そこで、最初はフリーランスでフィギュアの原型師として、MARVELのフィギュアの原型などを作っていました。
コトブキヤ ARTFX PREMIER スカーレット・ウィッチ フィギュア原型
──その後は、どんなお仕事を?
先輩や友人の紹介で、映画やMV、CMなどのモデリングをするようになりました。
──当時も、フリーランスでしたか?
そうですね。在宅でひとりで仕事をしていました。その後、メタバースが流行った時期に、友達がメタバースやNFT事業に関わることになり、「一緒にやらないか」と誘われました。その時期に僕だけでは回せなくなって。大学の同級生でフリーランスとして活動している仲間を集めて、チームで活動するようになりました。
──音楽系の仕事が増えたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
デジタルハリウッド大学で映像系の授業やゼミを担当している髙野良和先生がきっかけです。直接授業を受けていたわけではありませんでしたが、先生と仲良くなって。髙野先生はGROUNDRIDDIMという音楽系の映像を制作する会社の代表なので、仕事を紹介していただくようになりました。僕もGROUNDRIDDIMに所属していますし、最近になって髙野さんともうひとりの代表、僕と妻のヴェルーナで別部隊のCGチーム「DotINK」も立ち上げました。
また、大学の同級生には映像作家として活躍しているSpikey Johnという友達もいます。彼からCDジャケットの制作を依頼され、そのあたりからクライアントワークではない自分のキャラクターも作るようになっていきました。
Gokou Kuyt & who28 キービジュアル(左)
Cyprus 「ELFBOY」 アルバムジャケット(右)
──YOASOBIの仕事も、その流れで始まったのでしょうか。
それはまた別で、SNSに直接ご依頼が来ました。以前から、ネットに上げた作品をご覧になったアーティストからジャケットの制作依頼が来ることはよくあって。その流れでYOASOBIさんからも声をかけていただきました。
──ご自身の中で、手応えがあった仕事、転機になった仕事は?
やっぱりSpikey Johnから頼まれた、自分の個性を出したアートワークですね。自由にやらせてもらいましたし、その辺りから僕個人に対する作品の依頼が増えていきました。
POPYORUS2024 カウントダウンムービー(左)
NOVA,DJ UPPERCUT 「GreyBlueTint」ジャケットアートワーク(右)
──フリーランスとして、順調にキャリアアップしていますね。
そうですね。知り合いや周りの方から仕事をいただける環境に恵まれていることに感謝しています。ただ、まだまだ技術を磨かなければいけなかったりやりたいことも多いので日々勉強させてもらっています。
──いろいろなつながりで、今のMiyamaさんがあるわけですね。
そうですね。他にも、森田さんをはじめ、クリーチャー制作に特化したクリエイティブチーム「干支」にも参加しています。いろいろなチャンネルがありますが、今後は自分の作品づくりに、より力を入れていきたいです。
「ホームカミングデー」に向けて、太陽をイメージしたキャラクターを制作
──「デジタルハリウッド校友会 ホームカミングデー2025」では、キービジュアルの制作を担当しています。どんな依頼があり、どのようにイメージを膨らませて作品を制作したのでしょうか。
「卒業生がもっとラフに参加できるよう、親しみやすいポップなキャラクターを」という依頼をいただきました。そこで、勝手に「デジハリ君」というキャラクターを考えて。よく企業にマスコットキャラクターがいますけど、ああいうキャラがいたら面白いかなと思ってデザインしました。背景は数パターン提出しましたが、キャラクターは最初からあのデザインでした。
──星のようなデザインにしたのはなぜですか?
「友情」から「太陽」を連想しました。デジタルハリウッドと言えばオレンジのイメージが強いので、この色にしています。
──背景はどのようなイメージですか?
海外ドラマのホームカミングパーティーで、ああいうキラキラしたカーテンを見たことがあって。以前大学の4階のカフェテリアスペースに芝生があったので、それを思い出してキャラクターを芝生の上に乗せました。
──Miyamaさんはホームカミングデーに参加したことはありますか?
実はまだないんです。卒業してからも、デジタルハリウッド大学の仲間とはしょっちゅう顔を合わせているので。今回のホームカミングデーで、久しぶりに会う人もいると思うので楽しみです。このキービジュアルをグッズにしてもらえるそうなので、それも期待しています。
──Miyamaさんは、現在の仕事でもデジタルハリウッドの卒業生とチームを作って活動しています。大学で培った経験や人脈は、今の仕事に活かされていますか?
仕事上の人間関係は、ほぼ大学で培いました。もともと僕の代は仲が良かったですし、卒業後にフリーランスになった人も多いんです。ちゃんと会社勤めができる人が少なかったからかもしれません(笑)。
そもそも僕は、慣れない相手よりも気心の知れたメンバーと、気を遣わずに仕事をしたいタイプです。デジタルハリウッドの仲間と一緒に、徐々にスキルアップできたらいいですね。
個人の創作活動に力を入れたい
──「ホームカミングデー」のキービジュアルをはじめ、Miyamaさんの作品はポップな色づかいが特徴です。これまでに影響を受けたものはありますか?
子どもの頃に観ていたアメリカのカートゥーンアニメや「NINTENDO 64」のゲームなど、いろいろ混ざっていると思います。具体的には、アニメだとディズニーの『ピーターパン』、『トムとジェリー』、ゲームだと『スーパーマリオ64』『ドンキーコング64』『大乱闘スマッシュブラザーズ』。鮮やかな色づかいが好きでしたね。超有名なタイトルばかりで、あまりコアなものは通ってきていないかもしれません。もちろん『仮面ライダー』や『ウルトラマン』など日本の作品も好きでした。
──創作活動をするうえで、Miyamaさんが大事にしていること、ポリシーはありますか?
ちょっとふざけた感じは意識しています。あとは、迫力があって印象に残るもの、楽しいものを創りたいですね。テーマパークなどのアトラクションも好きなので、観ていて楽しく入っていける映像、自分が観て楽しい作品を目指しています。クライアントワークでは、先方に喜んでいただけるものを作るようにしていますが、それでも自分の好みやクセは無意識に出ていると思います。
XG 「WOKE UP」Lyric Video
──現在は、どういったペースでお仕事をしているのでしょうか。
最近は求められるペースがどんどん早くなってきていて……。簡単なものだと1週間から10日で納品することも。ただ、納期が短いとクオリティを上げるのも難しいので、ひとつの依頼につき1ヵ月はいただけるとうれしいです。
──創作を行ううえで、日々どのようなインプットを心がけていますか?
インプットは常に意識しています。何か思い浮かんだら、スケッチしたり絵を描いたり、仕事以外の創作も日々行っています。
──今後、3Dアーティストとしてどのように活動を広げていきたいですか?
今後は、個人的な作家活動に力を入れていきたいです。3Dプリントでフィギュアなどの作品を作って販売したり、個展を開いたり、アーティスト活動の比重を高めていこうと思っています。
──創作をしていて一番楽しいのは、どういう時ですか?
デザインをする段階が好きですね。どんな見た目にしようか、作品の大枠を考えるのが好きなので。
あとは、ずっと家で仕事をしているので、外に引っ張り出してもらえるのはうれしいです。例えばライブ映像の仕事をしたあとに、そのライブに呼んでもらったり。YOASOBIのツアーキービジュアルを手がけた時は、そのビジュアルをもとにフラワーアートなども制作していただき、とても感動しました。
──今後のお仕事の予定を教えてください。
4月26日から、大阪市立美術館で始まる日本国宝展で流れる展示映像を担当したのでぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
Daiki Miyamaさんが学んだ校舎はこちら
デジタルハリウッド大学
3Dアーティスト
Daiki Miyamaさん
東京工芸大学を経て、2015年にデジタルハリウッド大学に入学。田中謙光さんとともに取り組んだ卒業制作「Radiate」でDIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2019 ベストCGアニメーション賞受賞。卒業後はコトブキヤの原型師、3Dモデリングなどの仕事を経て、3Dアーティストに。YOASOBIライブツアーキービジュアル、XGリリックビデオなどを制作。現在、CGクリエイターユニット「DotINK」、映像制作会社「GROUNDRIDDIM」、クリーチャー専門CG制作ユニット「干支」に所属。