Interviewインタビュー

No.56

公開日:2022/12/05 

所属も得意分野もばらばら。「いたずらクリエイティブ集団URO」メンバーの共通点はデジタルハリウッド大学で出会ったこと

デジタルハリウッド大学デジタルハリウッド大学大学院

No.56

エンジニア・黄川田佑太さん(写真右)
デジタルハリウッド大学2021年3月卒業、2021年4月デジタルハリウッド大学大学院入学

メディアアーティスト・川口萌花さん(右から2番目)
デジタルハリウッド大学2021年3月卒業、2021年4月デジタルハリウッド大学大学院入学

映像作家・橘敏輝さん(写真中央)
デジタルハリウッド大学2021年3月卒業

プランナー・平松レイナさん(左から2番目)
デジタルハリウッド大学2021年3月卒業、2022年4月デジタルハリウッド大学大学院入学

エンジニア・大溝一生さん(写真左)
デジタルハリウッド大学2021年3月”引退”

イラストレーター・ラッセル桑山さん(画像のみで参加)
デジタルハリウッド大学2021年3月卒業

デジタルハリウッド⼤学13期生で構成された「いたずらクリエイティブ集団URO」。

所属しているのは、作品のシステムを設計する黄川田佑太さん、CG技術で空間をデザインする川口萌花さん、映像制作や演者を担当する橘敏輝さん、コンセプトの設計や広報を担当する平松レイナさん、展示会の総合的な設計を担当する大溝一生さん、イラストや演出を担当するラッセル桑山さんです。

得意分野がばらばらで、幅広い業界を“ウロウロ”としているメンバーが集まる「いたずらクリエイティブ集団URO」。彼らはデジタルハリウッド大学(DHU)在学中だけでなく、卒業後も一緒に制作を続けています。

「いたずらクリエイティブ集団URO」としてどんな活動をしているのか、デジタルハリウッド大学の卒業生同士だからこそできる仕掛けなどを、皆さんに話してもらいました。

在学中は「三浦七緒」として、有志で立ち上げたグループ展や学内のハロウィンイベントに出展

Q
皆さんは、2020年度にDHUを卒業した同期ということですが、もともとはどんなつながりでしたか。
A
川口:わたしとラッセルさんが1年生のときからずっと仲が良くて、「周りの人と何か面白いことをやりたい」って話していたのが集まるきっかけでした。


橘:グループが最初からできていたというよりは、それぞれに関係性があったんだよね。僕も川口さんとはランチ仲間だったし。

平松:入学時のオリエンテーションで一緒になったり、あとは2年次に参加した「起爆展」で出展者として集まったりして、そこから川口・ラッセルペアが皆をつなげてくれました。

川口:まだ全員と話したことはなかったけど、彼らと一緒に面白いことをやりたいと思って。お世話になっていた教授に展示会の新規企画書を送るときに、勝手にメンバーとして名前を入れて、その企画を提出したことを事後報告しました(笑)。

橘:僕にとっては起爆展がDHUで作品を展示する初めての機会でした。これは各々思っていたと思うんですけど、もっと展示する場所がほしかった。だから川口さんたちに誘ってもらえたのは純粋に嬉しかったんです。

Q
在学中はチームとしてどんな活動をしていましたか。
A
川口:当時はUROの6人に加えて、もうひとりメンバーがいたので合計7人だったんです。社会人になってからは、仕事の都合で彼は参加できず6人になってしまったけど。

橘:だから在学中はチームの名前も違っていました。初期のチーム名は「三浦七緒」。7人が集結して、ひとりの人間として活動するというコンセプトでした。


平松:最初は原宿のDESIGN FESTA GALLERYで、「百感展」を開催しました。21世紀になってさまざまな表現ツールが登場する中、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚という五感を超えた、未知の感覚がまだまだあるんじゃないか。その可能性を探るべく「百感展」というタイトルにしたんです。

橘:チーム全体で、感覚をテーマにした作品を3つ作ったんですよね。たとえば、都市伝説を再現するような作品とか。うわさレベルですが、心霊スポットでは20Hz以下の周波数が検出されるらしく、それは幽霊が発しているものであり、その音域を聞ける人は幽霊が見えるみたいな説があるんです。

いわゆる「第六感」を刺激され何者かの気配を感じる体験をしてほしくて、一般的に人が探知できないと言われている20Hz以下の音を出す作品を展示しました。

Q
「百感展」がチームとして初の展示の場だったんですね。その後は別の企画も考えていったのでしょうか。
A
平松:ほかには学内のハロウィンパーティにも展示を仕掛けました。DHUは皆がハロウィンに力を入れていて、コスプレをする人がかなり多かったんですよね。そこで撮影会みたいになるから、フォトスポットを作ったら皆が喜んでくれると思って。

黄川田:写真のように展示×映えを意識して、実際に棺おけに入れるセットや最後の晩餐のようなフォトブースを設営しました。学生だけでなく、学長はじめ大学スタッフや教員の方々も喜んでくれましたね。



平松:「謎のメンバーからの招待状が送られてきた」というストーリーで、大学中に招待状をばらまいたんです。そのおかげか多くの人が集まってくれたので、SNSへの投稿も多く、メンバー同士でエゴサして盛り上がりましたね。

社会人になっても、引き続き展示会を企画

Q
DHU卒業後は6人で再始動したということでしたが、最初はどんな活動を?
A
平松:社会人になりたての4月に、Zoomで集まったのが最初の活動ですね。「社会に飲まれないぞ」「会社以外でも皆でモノづくり続けたいよね」って共鳴して、そこから6人で活動を再開したんです。ただ「“三浦七緒”のままだと数字の7が入っているから、名前とかコンセプトを変えなきゃね」という話になって。

川口:コンセプト設計の時期が長かったよね。

黄川田:水族館に集まって考えたりとか。

橘:そうそう。コンセプトを固めるための視察と称して、水族館にみんなで行きました。アイデア出しをしすぎていて、社会人1年目が終わりそうになっていたので、先に展示会の会場を押さえてゴールの日付を決めたんです。


黄川田:日取りが決まると皆のエンジンがかかるので、コンセプトが固まり「いたずらクリエイティブ集団URO」という名前をチーム名として採用しました。樹洞という樹木内部の隙間が由来で、キツツキやフクロウの住処をイメージしてもらうと良いかもしれません。

▼「いたずらクリエイティブ集団URO」のステートメント

すきまからニヤニヤを。
われわれは すきま に仕掛ける。
世の中の大半の人が気に留めてない場所へ、仕組みへ
まるでいたずらを仕掛けるように実装していく。

所属もバックグラウンドも得意分野もばらばら。
例えるなら、クラスに1人居た変わったヤツだけが集まった集団。
それはもうカオス。個性の殴り合いと言っても過言ではない。

そんなメンバーがすきまを発見すると うろうろとあつまり、くわだて、つくる。
カオスがぶつかった先にはなにがあるのか。
これを見ているあなたをニヤニヤさせられるものを
われわれはニヤニヤしながらつくっていく。

平松:上記が「いたずらクリエイティブ集団URO」のステートメントで、わたしたちは陽ではなく、どちらかといえば陰の集まり。「木のうろ」のような暗所でこっそりたくらむイメージ、かついろんな業界をウロウロしているメンバーが多いので、それを掛けてこの名前に落ち着きました。

橘:初の展示会会場としてお借りできたのは、渋谷区役所の旧庁舎でしたね。

Q
プロジェクトはどのように進んだのでしょう。
A
平松:キービジュアルを作ったり、会場を視察したり、皆でコンセプトを練り直したりして実装しました。

▲制作フロー

平松:アイデアはとにかく出てくるんですけど、話が膨らみすぎて進まないんです。

川口:ただ映像を作るだけじゃ嫌だ。

平松:ただ映像を投影するのも嫌だ。

川口:それは何が面白いの?ってお互いに聞いちゃうから、決定までに時間がかかるんです。プロジェクトマネージャーがいないのは悩みの種ですね。

橘:それぞれがプロフェッショナルなので、きっと開催日までには間に合うだろうとお互いに信頼しているからこそ、ギリギリまで詰められたんだと思います。結果的に徹夜するはめになったので、信頼というか過信だったのかも。

一同:(笑)。


橘:結果的には日本初の体験型NFT(ジェネレーティブアート×展示)として、日経プラス9さんなどのメディアに取り上げていただきました。


Q
URO独自の展示会もされている中、先日はDHUの夏のオープンキャンパスでもお見かけしました。
A
平松:そうですね。来場者を歓迎するブースのひとつとして、出展しました。事務局の方から「7月か8月のオープンキャンパスで作品を展示しませんか」とご連絡いただいたのがきっかけです。

黄川田:高校生を対象にした展示ということで、すこし慎重にやろうと思って。

川口:刺激が強すぎないように。

平松:そこでふたりは揉めてたよね(笑)。

黄川田:企画のコンセプトが「みせもの小屋」で、ただの映え空間だと思って進むと、実はマジックミラーで覗かれていたのが裏側の部屋で判明するという仕掛けでした。僕が高校生だったら見せ物にされるという体験はちょっと恐怖を感じると思ったんです。




大溝:でも高校生に対して、「あなたは魅せる側か、それとも魅せられる側か」「これから仕掛ける側になろうよ」という問いかけやメッセージは明確だったよね。

黄川田:そうだね。作品の方向性は良かったけど、どう表現するかはバチバチしちゃうことはあるかも(笑)。結果としては川口さんの案を実装して、体験してくれた高校生たちの反応が上々だったので良かったですね。

デジタルハリウッドの卒業生の力をかけ合わせて、会社ではできないことを

Q
これまでグループとして活動する中で、デジタルハリウッドの出身者だからこその良さを感じることはありましたか。
A
橘:異なるプロフェッショナルが集まっているから、できることの幅が広いのは特徴ですね。ただ、メンバーの得意分野は全然違うのですが、皆どこか被っている部分があるんです。そこは1学部1学科制のDHUルーツという感じがします。

平松:これは本当にそう思う。

大溝:基礎的な部分はDHUで共通して学んでいるからスキルとして重なる部分はあるけど、応用部分はそれぞれの分野を深めていきその後プロになった。意見がぶつかることはしばしばありますが、DHUで培った共通言語をベースに話しながら、ひとつの作品を一緒に作ることができている。デジタルハリウッドの出身者らしい集まりになっていると思います。


黄川田:卒業生同士だから仲良しグループという感じではなく、戦友という感じがするよね。

橘:そうだね。プライベートのことはそんなに深追いしないかも。皆の会社のことはそんなに知らないし。

川口:確かに、お互い過干渉しないから適度な距離感で関われていると思う。良い意味でそこまで人間に興味がないのかな(笑)。

平松:最低限、生存確認できてれば良いくらいだよね。生きてるかな、倒れてないかなって。

大溝:とはいえ、Slackのチャンネルはあるから、気になったニュースとか作品のリンクを送ることはあるけど。

橘:あとはこのメンバーで展示会に行くこともあって、ひとりで行くよりもそれぞれの視点が違うから楽しいんですよね。

川口:あのソフトを使っていそうとか。

平松:プロジェクターをこうやって設置しているんだとか。

黄川田:展示パネルの裏側はこうなっているんだとか。

橘:同じ作り手の立場として、それぞれがどこを見たのか話し合えるから、ひとつの作品から得る情報量が多いんです。そこでインプットしたものをこのチームでアウトプットしていく、良い関係性だと思います。

大溝:会社以外に気軽に展示会に行ける仲間がいたり、創作活動の場があったりするのは大切ですよね。イラストレーターやプランナー、映像クリエイターなど、バラエティ豊かなプロを集めるのってそう簡単なことではないと思うんです。デジタルハリウッド出身者にしかできないことをこのチームでやっていると自負しているので、これからもより面白いことができるんじゃないかと思っています。

いたずらクリエイティブ集団URO
https://uro.monster/
https://twitter.com/jp_uro

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デジタルハリウッド大学
デジタルハリウッド大学大学院

エンジニア・黄川田佑太(きかわだ・ゆうた)さん

1998年岩手県生まれ。モバイルアプリの開発とPMの経験を活かし、現在は「こんなのあったら、を実現したい。」をテーマにスタートアップ立ち上げ。IoT関連の事業を行っている。ソフトウェアエンジニア時代はスマホでもPCでも、いつでも、誰でも、同じように使えるクロスプラットフォームアプリの開発も行っており、今でもデベロッパーとしても活動している。現在は機械学習を活用した画像認識・自然言語処理およびインフラレベルの仮想化・クラウドインフラの研究を行っている。

メディアアーティスト・川口萌花(かわぐち・もか)さん

1999年東京都生まれ。 2022年現在デジタルハリウッド大学院M2、クリエイティブ会社「PARTY」所属。 高校の頃から映像制作を行い手描きアニメーションと3DCGを駆使した作品を制作。 現在はインスタレーションやメディアアートを中心にインタラクティブな作品制作を行っている。 2018東京国際プロジェクションマッピングアワードVol.3優秀賞受賞、2021デジタルフロンティアグランプリ、ベストアート賞受賞など。

映像作家・橘敏輝(たちばな・としき)さん

1998年東京都生まれ。3歳からミュージカルの舞台に立ち始め、ミュージカル『忍たま乱太郎第1段』乱太郎役、ハリー・ポッター死の秘宝Part2(吹き替え)など子役時代より活躍。高校時代、文学座・新国立劇場の俳優陣のもと、総合芸術について勉強し、その後デジタルハリウッド大学で身体表現を軸とした映像表現を追求。現在はhackjpnで、芸術×ビジネスの領域でコンテンツを輩出し続ける。 数々の著名人のYouTubeの制作・運営に携わり、ディレクション・撮影・編集・生配信といった業務をこなす。

プランナー・平松レイナ(ひらまつ・れいな)さん

1997年愛知県生まれ。 小学5年生の時にゲームにハマり自分が消える感覚を覚え危機感から小学6年から3年間、NHK のドラマに出演。 ドラマ撮影の裏側を見て、仕掛ける側に興味を持つ。 高校時代はライブイベントの運営と司会、映像制作を行い高校卒業後は1年間放浪生活を送る。放浪した末にデジタルハリウッド大学に入学し、違和感をテーマにインスタレーションを作成。 趣味は廃墟、事故物件。

エンジニア・大溝一生(おおみぞ・かずき)さん

1998年千葉県生まれ。ストリーミングサービスの運用エンジニアを経験後otuA株式会社にてテクノロジーサイドの制作を担当。ハードウェア・ソフトウェアの両面をカバーしながらデザインも含めた全体的なクリエイティブ・運用を行っている。

イラストレーター・ラッセル桑山(らっせる・くわやま)さん

1998年生まれ。さすらいのイラストレーター。

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