No.2
WEBエンジニア
薄井 直子さん(デジタルハリウッド横浜校卒業)
このインタビューは2015年12月当時の内容です。
はじめは独学で勉強、その後にデジタルハリウッドへ
――薄井さんは、2年前にデジタルハリウッドSTUDIO横浜のWebデザイナー専攻を卒業されたそうです。入学前からWebのお仕事をされていたのでしょうか。
実は私、もともとタコ焼き屋で働いていたんです(笑)。その後、ドコモショップの店員を経て、派遣社員として事務職に就いたところ、「社内のイントラネットのページを修正してほしい」と言われて……。それがWebに関わる最初の一歩でした。やがてWebの仕事を面白くなり、独学で勉強を始めることに。その後、企業のWeb担当として入社でき、そこでも実務を通じていろいろなことを学びました。そちらの派遣期間が終わった後も、Web制作会社に入社。トータルで約7年ほどWebの仕事に携わりました。
――実務の中でWebに関する技術も磨かれたと思います。それでも、改めてデジハリに入学したのはなぜでしょう。
最初の会社は私ひとりでサイトを運用していたので、なにかわからないことがあるとネットで調べるしかありませんでした。2社目では、尊敬するWebデザイナーの先輩に出会うことができ、その方と比べて私には何が足りないのだろうと考えるようになりました。また、仕事を続けるうちに、私がやりたいのはWebサイトの運用やデザインよりもフロントエンド、つまりコードを書く仕事だということもわかってきました。とはいえ、Webデザインのことがわからなければコードで表現することもできません。Web制作会社に応募してもなかなか入社できなかったため、そろそろしっかり勉強しようと思い、入学を決めました。
――デジハリを選んだのは、なぜでしょう。
最初は、ネームバリューで選びました(笑)。もちろん、入学してみたら身になることがたくさんありました。まず、講師の方から現場の話を聞けること。デジハリの場合、講師の方が現役として活躍されています。たとえばセンタリングにもいろいろやり方があるけれど、現場ではどれがスタンダードなのか、スタンダードな方法を調べるにはどうするべきかなど、実際に役立つスキルを身につけることができました。講師の職種もWebディレクター、デザイナー、コーダーなど多岐にわたり、それぞれの立場で意見をいただけたのも勉強になりました。あとは、卒業制作でポートフォリオを作れたこと。それまでは独学だったので、ポートフォリオを作っても自信が持てませんでした。でも、デジハリで講師の方にチェックしていただいたため、卒業時には自信を持って提出できました。
デジハリで得たものは人とのつながりができたこと
――Webの技術以外に、デジハリで得たものはありますか?
人とのつながりができたことですね。前回、このインタビューに登場した奥山さんともいっしょに仕事をしています。デジハリの場合、入学時期が多少ずれている人とも知り合いになれるんです。そういう方々と仕事を融通しあったり、同じ案件に取り組んだりできるのは大きなメリットですね。
――では、デジハリを卒業した後の話をお聞かせください。
入学前から、HTML5とレスポンシブという技術は絶対に学ぼうと決めていました。卒業制作でそれらの技術を使うことができ、自信もついたんです。そこで、卒業した瞬間からハローワークに行き、Webの制作会社にどんどん応募しました。そして、合格したのが今務めているINFO LOUNGEという会社です。ちょうど横浜市から大きな仕事を請け、人員を増やしている時期だったので、タイミングが良かったのでしょうね。
――応募時に提出したポートフォリオは、どんなものでしたか?
デジハリの卒業制作で作ったサイトをお見せしました。父親が経営していたラーメン屋のサイトですが、会社の方々が食いしん坊だったせいか食いつきが良くて(笑)。写真に凝ったり、湯気を加工したり、細かいところまでこだわったのが良かったのかもしれません。
仕事を重ねるごとに自信がつきフロントエンドエンジニアと言ってもいいのかなと思うように
――これまでに携わった仕事について教えてください。
横浜市の中小企業を海外にアピールするWebサイト「Excellent Companies in Yokohama」、無印良品が運営する「ローカルニッポン」などです。どちらかと言うと、行政系の仕事が多いですね。
――中でも、転機になった仕事はありますか?
Jリンク株式会社という企業のサイト(http://jecter.jp/)です。私はJava Scriptが苦手だったのですが、実装できたことで自信がつきました。このサイトでは、デザイナーのこだわりでエフェクトをたくさん入れ、遠近感を出すために3枚の画像を重ねているんです。動きをつけながら、3枚を重ねるのが難しかったですね。これまではコーダーを名乗っていましたが、このサイトを完成させてからはフロントエンドエンジニアと言ってもいいのかなと思うようになりました。
昼は会社勤め、夜はフリーの仕事
――現在は、会社で働くかたわらフリーランスとしても活動されています。フリーとしてのお仕事は、どのように始めたのでしょうか。
フリーの仕事は、2015年から始めました。以前の勤め先や、デジハリで知り合った方々から仕事をいただくことが多いですね。勤務先も「外部とのつながりがあったほうが、新しい技術が流れ込んできやすい」と、副業を認めてくれます。しかもフリーとして請けた仕事に関しても、わからないことがあれば会社のみなさんが教えてくださるんです。私にとっては、最高の環境です。
――とはいえ、昼は会社勤め、夜はフリーの仕事をするわけですよね。毎日大変ではありませんか?
寝るかコードを書くかの毎日です(笑)。とはいえ、勤め先の会社で在宅勤務を認めていただいているので、週に1、2日しか出勤していません。私は犬が好きで、捨てられた犬を保護し、自宅でかわいがりながら仕事をしたいと思っていたんです。その望みも叶いましたし、仕事も楽しいし、毎日充実しています。
――会社の仕事とフリーの仕事で、意識に違いはありますか?
会社で請けた仕事に関しては、私はプロジェクトの一員でしかありません。でも、フリーで請けた仕事はすべて私に責任がかかってきます。その点で、意識の違いはあります。とはいえ、そうやってひとりで請けて必死でコードを書いた結果が、会社での仕事にも活かされるんです。良い循環が生まれていると思います。
――仕事上のどんな点にやりがいを感じますか?
Webサイトをリリースした瞬間は、達成感を覚えます。ほかには、これまで書けなかったコードを書けるようになった時。デザイナーが意図したことを、きちんと表現できた時もやりがいを感じます。
自発的に新しい技術を勉強
――Web業界は、日々進化しつづけていますよね。新しい知識を仕入れるために、どんなことをしていますか?
これまでWebサイトの運用と制作、両方の会社を経験しました。両者で最も大きな違いを感じたのが、新しい技術に触れる機会でした。制作会社では、日々新しい技術を取り入れます。その結果、自然な形でステップアップできるのです。一方、運用の仕事は、新しいサイトを作るわけではないので、自発的に新しい技術を勉強しなければなりません。『ハウルの動く城』のように、いろいろなモノをゴテゴテとくっつけて、なんとかサイトを成立させている……という状態が多いように思いました。また、私の場合、会社で開かれる週1回の勉強会に参加しているので、そこでも新しい知識が入ってきます。毎回スピーカーが決まっているわけではなく、社員全員がスピーカーになるので、幅広く情報交換できます。
ずっと学びつづけなければならないと思っています
――在宅勤務も副業もOK、勉強会も開催してくれるなんて、本当に良い会社ですね。
とても感謝しています。社員は10人ですが、職種も技術力もバラバラ。アプリの開発も行なっていますし、アプリ制作にWebエンジニアが協力することもあります。私もいつかアプリのプログラミングができるようになりたいですね。
――薄井さんは、楽しみながら新しい技術を勉強しているように感じます。「この技術がないと食べていけない」という危機感もあるのでしょうか。
もちろんあります。ただコードを書けるだけでは、エンジニアは務まりません。だからこそ、ずっと学びつづけなければならないと思っています。
――Webエンジニアが天職なのでしょうね。この仕事には、向き/不向きはあるのでしょうか。
論理的な人のほうが向いていると思います。私が初めてデジハリでPHPを学んだ時、脳みその今まで動いたことのない部分が動き、熱くなった気がしたんです。タコ焼き屋で働いていた頃には、味わったことのない感覚でした(笑)。あの時に、何かが切り替わったような気がしますね。コードを書くのは、パズルのようなもの。根気強くパズルに取り組める人、物を作るのが好きな人は、きっとハマるのではないかと思います。
「工程管理は重要」「進捗報告はしっかりと」
――薄井さんと仕事をされた方からは、「工程管理や進捗報告がしっかりしていて仕事をしやすい」との声も聞いています。仕事をするうえで、心がけていることはありますか?
私の場合、ドコモショップで働いた経験が活きていると思うんです。ドコモショップの店員は、接客業であり、コミュニケーションが大切な仕事です。ほかにも、事務の仕事ではスケジュール管理の重要性を学ぶなど、一般企業で働いた経験が自分の糧になっています。ですから、今まで自分が経験した仕事の中で「これは今後も役立つだろうな」と思うことを“棚卸し”するように心がけています。私は転職を重ね、何度も棚卸しをしてきたので「工程管理は重要」「進捗報告はしっかりと」というのが、自然と身についたのかもしれません。
――なるほど。さまざまな職業を経験したことが、今に役立っているんですね。
Webに限らず、どの業界でも今まで学んできたことの棚卸しは必要だと思います。転職をする人は、必ずやるべきですよね。企業が求めるものと自分の資質がフィットしなければ入社できませんし、その後も活躍できないのではないかと思います。
――最後に、今後の目標をお聞かせください。
今の仕事をずっと続けていきたいです。それこそ死ぬ時まで(笑)。コードを書きながらバタッと死ねたら、幸せだろうなと思います(笑)。
インタビュー : 野本由起
Webエンジニア
薄井 直子さん(デジタルハリウッド横浜校卒業)
インフォ・ラウンジ合同会社に所属するWebエンジニア。フリーランスとしても活躍中。手がけたWebサイトは「ローカルニッポン」(株式会社良品計画)、「Excellent Companies in Yokohama」(横浜市経済局)、「LOCAL GOOD YOKOHAMA」(横浜コミュニティデザイン・ラボ)など多数。