Interviewインタビュー

No.45

公開日:2021/10/06 

「CG屋さん」として苦労が希望へ。大学院時代の学びを次世代へつなげていく

CGデザイナー代表取締役 デジタルハリウッドスクールデジタルハリウッド大学大学院

No.45

株式会社StudioGOONEYS 代表取締役
斎藤瑞季さん(デジタルハリウッド東京本校本科CG/VFX卒業、デジタルハリウッド大学大学院修了)

子どもの頃からゲーム好きだったという斎藤瑞季さん。憧れを仕事につなげるためにデジタルハリウッドの門を叩きました。学校の中で身につけた「CG屋さん」「エンターテインメント屋さん」という意識は、今も株式会社StudioGOONEYSで生きているといいます。スクール、そして大学院での学びから、エンターテインメントについてどのように捉えているかをお聞きました。
(※このインタビューは、2021年7月当時の内容です。)

スクールでCGを学んだ1年間

Q
斎藤さんは群馬大学教育学部を卒業後、CG業界への就職を目指してデジタルハリウッドのスクールに再入学されたということですが、数ある選択肢がある中でデジタルハリウッドを選んだ理由はなんでしょうか?
A
子どもの頃はテレビゲーム全盛期。私も特にRPGが大好きで、中学生の頃にはゲームクリエイターへの道も考えましたが、高校時代には部活などに夢中になり「ゲームは趣味」に変わっていきました。そのまま、周りと同じように大学を卒業して就職……となったとき、改めて自分がやりたいことは何かを真剣に考えはじめてみたら、中学の頃ゲームクリエイターになりたかったことを思い出しました。そんな折に人材募集の広告を見かけ、必要な技術を身につければ、自分にも可能性があるのではないかと考えたのです。憧れからリアルな進路へ変化した瞬間でした。

ちょうどその頃、デジタルハリウッド大学大学院の存在を知りました。卒業の年に大学院が設立されたのです。当時は、CGやコンテンツで学位をもらえるところは、まだどこにもない時代。唯一、その分野で上位学位がもらえる大学院を目指すために、まずは1年間デジタルハリウッドの専門スクールでCGを学ぼうと考えたのが入学のきっかけです。

Q
最初に入学したスクールでの学びで、印象に残っているエピソードを教えてください。
A
パッと思いつくのは、今も使っている「CG屋さん」「エンターテインメント屋さん」という言葉です。これはスクールの1年間で学んだよく耳にしていた言葉で、今経営しているStudioGOONEYSの中でも使われています。

あと勉強とは別ですが、同期と一緒に泊まり込みでゲームしたり、恋愛相談したり……まさに「青春」といえるような日々を過ごしました。みんなキャリアや年齢が異なるということもあり、面白い人たちに囲まれ、制作や作業の面でも仲間に支えられていたように思います。

Q
スクールに入学する前と比べて、修了する頃にはどれほどのスキルが身についたと感じられましたか?
A
CGの世界は奥深く、通常3年から4年かけて学んでやっと即戦力になるという世界なんです。1年という限られた時間ではCGの世界の入り口を学んだに過ぎませんが、CGが持つ可能性を感じるには十分でしたね。

同時に、コンテンツの世界が大好きだったので、これから将来CGが伸びると思ってスクールに入りましたが、勉強を始めると、あまりにも果てしないCGの世界に不安を感じるようにもなりました。

例えば、モデリングひとつをとってみても、キャラクターのモデリング、BGモデリングなど専門性があります。また、アニメーションにおいても、キーの使い方は学んだとしても上手なアニメーションをつけるためには、演技やボディメカニクスを理解していなければ難しかったりします。それまで想像していた以上に、CGは広く深い世界だったのです。

現場の声を知ることでCGへの希望が広がった大学院時代

Q
スクール修了後、デジタルハリウッド大学大学院に2期生として入学なさった斎藤さんですが、スクールと比べて大学院の印象や講義はいかがでしたか?
A
もともとCGを勉強する大学院だと思って入学したら、実際はその科目がほとんどなく、ある科目もすでにスクールで学んだものだったので、はじめは大変戸惑いました。当時60~70人ほどいた大学院の中でもCGを習得している人は、わずか3、4人ほどしかいませんでした。

しかしながら授業では「ディレクター」について学ぶプログラムが構築されており、実際にプロとして現場で働いている人たちが「どう作っているのか」「何を大切にしているのか」を聞けたことが面白かったですね。現場の肌感や仕事の向き合い方について学べたことは大きな成果でした

また、CGは社会にとってひとつの選択肢でしかないということを知る、いい機会にもなりました。時間が経つにつれてコンテンツを学ぶことに対する自分の主体的な関心が変化していきました。

2年次には、山本和夫先生のストーリーマーケティングラボラトリーという研究室に所属しました。研究室では名前の通り、ストーリーを使ってマーケティングをしていこうという取り組みを行っていました。

そこで明治製菓さんの案件で“友チョコを広めよう”という趣旨で『チョコレートンの冒険!』というCGを使った作品を作りました。自分たちでモデリングからセットアップまですべて行い、企業に対してプレゼンし、CMの制作権を勝ち取りました。
この頃はまだYouTubeもなく、ストリーミングでWebに動画を流すということも始まったばかり。そのような時代の中、いち早くCGを使ったコンテンツを人々に届けることができただけでなく、企業と直接取引することで、クオリティへの責任感やCGが社会に関わっていることを体感できました

それまではCGアニメーションは「CG屋さん」だけで作ると思っていたのですが、実際はたくさんの人との会話の中でモノを作っていく。作品づくりには、監督、照明、衣装……それぞれの役割があり、あくまで私たち「CG屋さん」はその中のひとつとして関わり一緒に作りあげていくものだと気づいたのです。

スクール時代に感じた苦労や不安が「希望」に変わりましたね。

※画像: ©Meiji Seika Pharma Co., Ltd. All Right Reserved

Q
斎藤さんの考えるデジタルハリウッドの魅力を教えてください。
A
まずは、学びを通したチャンスの幅が広いことが魅力だと思います。

また、私はスクールと大学院での学びを通して、CGだけでなく、「エンターテインメントとは何か」という大きな概念についても総合的に学べたました。このことは、デジタルハリウッドが大きく人生に働きかけたポイントだと感じています。

Q
卒業後もセミナーの講師を務めるなどデジタルハリウッドとつながりが深い斎藤さんですが、お仕事やプライベートでデジタルハリウッド関係者と一緒になるなど交流はありますか?
A
あります。スクールや大学院の同期の中には、StudioGOONEYSを手伝ってくれる人もいますよ。ピンチのときに助けてもらうこともあります。でも大学院の人たちとは、仕事上の関係というよりも友人としてプライベートで会うことの方が多いかもしれません。

あと、大学院でお世話になった先生方とも交流も続いていますね。例えば、先ほどお話しした山本先生には今でもお世話になっていて、先生に教えてもらったストーリープロットラインを私が自分の授業で使うこともあります。先生に「授業で使わせてください」って言ったら「おう、いいぞ!」と応えてくれて(笑)。すごく優しいし、尊敬する先生です。

デジタルハリウッドはチャンスに富む場

Q
デジタルハリウッドの学校理念は”Entertainment. It’s Everything!”ですが、斎藤さんはこの言葉をどのように解釈されていますか?また普段のお仕事の中でこの言葉が響く瞬間はありますか?
A
実はこの言葉、在学中は聞いたことがなかったような気もします…(笑)

常日頃から大事にしていることですが、エンターテインメントには、オーディエンスのことも考えた作品作りが大切だと考えています。

学生作品だと自分のスキルを伝えるために作品を作ることが多いかと思いますが、作品を見た人がどう思うかといった部分も「エンターテインメント」に含まれていると思うんですよね。

私たちにとってエンターテインメントは、「自由さ」もありながら、「仕事」でもあるので、相手がいてこそ成立し、伝わるものなので、自由と責任、それから思いやりが欠かせないんです

「Entertainment. It’s Everything!」という言葉で「Everything」と表しているように、「エンターテインメント」というものを広く捉えて欲しいなと感じました。

Q
今後の目標、将来像があれば教えてください。またその目標に対して、さらなる”学び”が必要だと感じることはありますか? もしくは、目標達成のためにされていることがあれば教えてください。
A
実は今年、StudioGOONEYSは10周年になるんです。デジタルハリウッドで出会った仲間たちと作っていった会社でして、この仲間たちと、ずっと仲間でありたいという思いを込めて、映画の『グーニーズ』(The Goonies)をもじって社名にしました。映画の海賊船に翼を付けて、仲間と一緒に羽ばたいていきたいという思いを込めています。

どういう風に羽ばたくかというと、大学時代からストーリーを勉強してきたので、今後もストーリーに携わる仕事をしていきたいと考えています。ストーリーというのは、脚本を書くだけではなく、出来上がったストーリーを表現することが大事になってきます。StudioGOONEYSで制作したモンストアニメ『ノア 方舟の救世主』という作品においても、ストーリーやキャラクターの感情がオーディエンスに伝わるよう、1カット1カットに向き合って制作をしていました。その熱量を持ち続けてものづくりをしているのがStudioGOONEYSの強みでもあるんです。

あと今後、CGで作った映像作品を「なんだCGか」と思われるのではなく、「やったCGだ!」「CGすごい!」と思われる時代にどんどんしていきたいです。

そのための、「CG屋さん」たちが今後、エンターテインメントとは何かを考え、技術だけでなくオーディエンスのことまで考えて制作していける環境を作っていきたいと考えています。

Q
デジタルハリウッドの現役の在学生や卒業生、関係者など、インタビューを読んでいる読者にむけてメッセージをいただければと思います。
A
エンターテインメントは基本0→1ですが、仕事としてのCGの役割は1→10が多いと思います。この1→10の中で、常に0→1を意識して取り組んでほしいなと思います。

私達が作っている1カット1カットは1→10なのですが、思いとしては0→1。それがオーディエンスへ向けることができれば、本当にクリエイティブになるのではないでしょうか。デジタルハリウッドの中には、それを体感するチャンスがたくさんありますよ。

斎藤瑞季さんが学んだコースはこちら↓↓
デジタルハリウッドスクール本科CG・VFX専攻
デジタルハリウッド大学院

株式会社StudioGOONEYS 代表取締役
斎藤瑞季さん
大学卒業後、デジタルハリウッド本科CG/VFX専攻に進学。修了後、デジタルハリウッド大学大学院へ入学し、修了後に2012年4月5日3DCG映像制作会社の株式会社StudioGOONEYS を立ち上げる。

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