イベント概要
イベント名 | DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2021 |
日程 | 2021/4/4 |
デジタルハリウッドは、2021年4月4日大学・大学院・専門スクールの合同入学式と前年度の優秀作品発表会、「DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 2021」(以下:DF2021)を開催しました。
「DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX」はデジタルハリウッド設立当初から開催している伝統的なクリエイティブアワードです。26回目の開催を数える今回のコンセプトは、「空間を超えて届けるコンテンツの未来」。今年は東京・有楽町朝日ホールに一部の新入生と関係者が集まり、会場の様子はYouTubeを通じて全世界へ配信されました。
空間、言語の壁を越えて。ようこそ、デジタルハリウッドへ。
昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からオンライン開催のみとなった同イベント。今年のDF2021では、来場人数制限、参加者のマスク着用、除菌液の配布などの感染予防対策を徹底し、オフラインでの開催となりました。
DF2021は、4月にデジタルハリウッドの門を叩いた新入生だけでなく、昨年入学式に参加できなかった新2年生を歓迎する場。第1部の入学式では新入生全員が主人公ということで、彼らが語る夢や目標、覚悟などが集められた特別なムービーが制作されました。
「人の人生を揺るがすゲームを作りたい」
「自分で制作した映像や考えた企画で、地元をもっと盛り上げられるように、DHUでたくさん勉強していきたい」
「卒業後は自分の作品がワールドワイドに評価されるようなアーティストになりたい」
「夢は映画やゲームのCG制作に携わって、エンドロールに自分の名前を載せること」
「家族や友達、身近な人とのつながりを大切にするためのツールを作りたい」
「日本と中国の架け橋として活躍できるアーティスティックパフォーマーになる」
「デジハリでしか経験できない今を全力で」
夢を単なる夢のままで終わらせたくない、そんな一人ひとりの想いが込められたムービーが会場で放映され、司会者の新4年生であるジェイド・フィアーズさん、大元かれんさんは「私たちと一緒にデジタルハリウッドで学んでいきましょう」と新入生を温かく歓迎しました。
またデジタルハリウッド株式会社の代表取締役兼CEOである吉村毅からは、毎年恒例の祝辞が述べられました。
使用された言語は日本語だけでなく、英語や韓国語など全部で15種類。すべての学生の出身地域の言葉が用いられ、世界各地から集う新1~2年生へお祝いのメッセージが贈られました。
そして2人目の祝辞として、デジタルハリウッドとは長年の友人関係にある俳優の別所哲也さんがスクリーンに登場。
「デジタルハリウッドにご入学の皆さん、そして保護者の皆さん、この度はおめでとうございます。別所哲也です。毎年入学式には足を運んでいるのですが、今回は新たにオンラインで皆さんとつながる入学式となり、僕自身も初めての体験です。」
「大変な世の中ではありますが、皆さんのそばには同じ悩みを抱えている、あるいは同じ夢や希望を持った仲間がいらっしゃるはずです。ぜひこのデジタルハリウッドという新しい学舎で、多くの友達を作り、先生方と意見を交換し、新しいクリエイティブな自分を発見してください。そこには限界はないはずです。」と激励の言葉が贈られました。
実写なのでは?と驚かれるフルCG。昨年度のグランプリ作品をお披露目
DF2021第2部では、2020年度の優秀作品を発表。デジタルハリウッドが展開する大学・大学院・専門スクール・オンラインスクール・STUDIO・ジーズアカデミー・デジタルハリウッドアカデミー導入校・上海音楽学院など国内外の59拠点でアウトプットされた作品の中から選出されました。それらの作品を審査するのは、アーティスト、クリエイター、起業家や研究者として各分野の最前線で活躍する卒業生たち。
DF2021の優秀作品発表の前に、昨年のグランプリ作品、中川祐さん(※「祐」は旧字体の「示へんに右」)の『dro:p』を改めて紹介。DF2020はオフラインでの開催ができなかったため、今回初めて大勢の前でお披露目されました。
■ DF2020 グランプリ作品『dro:p』
https://www.youtube.com/embed/0xLM3C7REu8?rel=0&showinfo=0
視聴した方から実写なのでは?と声が上がるほどのリアルなディティールが評価され、DF2020のグランプリに輝きました。
受賞者コメント:作品を制作するにあたって背景にいちばんこだわりました。細かい部分も全て主役だと思っているので、どんなものがあるのか注意して見ていただけると嬉しいです。
そしてここからは、2020年度に制作された優秀作品を紹介するアワードパート。CGアニメーション、映像、研究論文など、1,000点を超える多様な作品の中から、DF2021の各部門賞とグランプリが決定しました。
インタラクティブ部門:アプリやメディアアートなど双方向性のある作品が対象
■ベストアート賞:川口萌花さん『Obsession』
https://youtu.be/bHOzYV_hgSM
「強迫観念に取り憑かれる」を意味する『Obsession』。作者の川口さんは、人が大勢いる環境から自分ひとりになった瞬間に不安を感じるそう。その不安を他の人にも体験してもらうために、本作品を制作したといいます。自分の作品を記憶してもらうだけでなく、その人の今後の感性に影響を及ぼしてしまうような体験を目指して設計したとのことでした。
受賞者コメント:正直DFは自分には関係のないイベントだと思っていたので、連絡をいただいたときは驚きました。今回こうした「ベストアート賞」という賞をいただいて、色々な方に認められたのかなと思いとても嬉しいです。
■ベストコミック賞:髙橋未来さん『身内にアイドルがいます!!』
架空のアイドルとその家族を描いたコミックエッセイ本。ストーリーに選択肢が存在するマンガで、読み手の行動によって話の展開が変化する仕掛けが盛り込まれています。髙橋さんのご家族にも実際にアイドルがいらっしゃるということで、実体験をベースにした物語のリアリティ、そしてそれを作品に落とし込む創造力が評価されました。
受賞者コメント:私にしかできない作品を作りたいと思って制作しました。無事完成させることができ、お世話になった先生方やモデルになってくれた家族に感謝しています。
グラフィック部門:ビジュアル表現・デザイン面を重視した作品が対象
■ベストデザイン賞:湯璧兆さん『中国の少数民族のロゴタイプデザイン』
服飾のデザインや建物の特徴など、中国の55の民族を独自に研究。各民族が継承してきたさまざまな要素と漢字を融合させたロゴタイプがベストデザイン賞を受賞しました。一部の少数民族の言語は消滅の危機にあります。今回の作品は、少数民族に馴染みのない現代の若者に関心を持ってもらうために制作されたそうです。
受賞者コメント:デザインを始めたきっかけは、藤巻先生の講義で先生に褒めてもらえたことでした。それによって自信がつき、たくさん制作していく中で自分の発想力やデザインスキルが磨かれていったのだと思います。UXデザイナーを目指して、頑張ります。
■ベストアートディレクション賞:平松玲奈さん「無意識差別」
坊主頭を見ると男性と判断する、ネイルや口紅が塗られた唇を見ると女性と判断する。人が無意識に行ってしまう差別を自覚してもらうために制作された、立体的なインスタレーション作品。企画、撮影、編集、演出、そして高いデザイン性が評価され、ベストアートディレクション賞が授与されました。
受賞者コメント:ちょうど4年前、新入生としてこの授賞式を観覧していて、先輩たちのすごさに圧倒されたことを覚えています。先輩たちを目指して4年間頑張ってきたので、いま受賞者として舞台に立てたことが幸せです。
サービス部門:デジタルコミュニケーションを活用し、課題解決を行うプランが対象
■ベストテクノロジー賞:加茂文吉さん『PaeTech〜Performance Art Education × Technology〜』
音楽業界に教育イノベーションを起こす3つのアプリケーション『PaeTech』。ユーザーそれぞれのグルーブ感を記憶し、それに合わせて楽器の練習が可能な『GrooveTracker』と、ほか2つのアプリが制作されました。プロのミュージシャンである加茂さんの専門性の高さ、そして時代に合ったサービスであることが受賞の決め手となりました。
受賞者コメント:音楽教育とテクノロジーを掛け合わせて、ミュージシャンでも分野を横断できると証明したことが大学院に入って良かったことだと思っています。次のシーズンからは博士課程で同じ研究を継続していくので、未来を生きるアーティストのために、これからも心血を注いでいきたいです。
■ベストサービス賞:園田正樹さん『あずかるこちゃん』
病児保育施設を予約できるWebサービス。審査員である株式会社グッドパッチの土屋尚史さんは「自分がこれまでDFで審査をしてきた中で、過去最高のクオリティ」と絶賛。提供する価値が本質的である点、施設の予約完了までの使い心地の良さ、事業としてもうすぐ黒字化が見えているなど、あらゆる点が優れていることからベストサービス賞が授与されました。
受賞者コメント:全国の病児保育室をリサーチし、多様な施設にフィットできるようカスタマイズ機能を工夫しました。それによって現場のフローを大きく変えることなく、スムーズにサービスを導入できるようになったと思います。保護者の皆さんの生活を支えられるような汎用的なシステムを目指して、今後もブラッシュアップしていきます。
研究・論文部門
■ベスト研究・論文賞:林千秋さん『失声者も利用可能なオープンソースの無発声音声入力デバイスの開発』
本作品を制作したのは、デジタルハリウッド大学入学前に看護師の仕事をしていた林さんです。病気で声を出せない患者さんとのコミュニケーションがうまくいかなかった経験から研究をスタート。失声者と健常者の呼吸経路の違いに着目し、画像認識や筋電センサーを使用したデバイスを開発しました。
受賞者コメント:大学院での2年間、看護に対して何かできることはないだろうかと考え続け、形になったものがこうして評価されたことは大変嬉しいです。今後は看護師として働きつつ、研究も進めていき、ものづくりナースとして頑張っていきたいと思います。
映像部門
■ベストCGアニメーション賞:クレメン・エスコソーラさん『Adarnia:A Sci-fi Shortfilm』
https://youtu.be/mKiqdIp6-4E
「Adarnia」という都市で警察に追われる、謎に包まれた主人公の物語。審査員の吉田健さん、原祐樹さんは「この作品をひとりで制作されたのが驚きました。プロとして通用する高い技術力を持ってらっしゃるので、ぜひハリウッドを目指してほしいです。」と絶賛。国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2021」CGアニメーション部門での上映も決定しています。
受賞者コメント:この作品を完成させるために、2年間全力で打ち込んできたので受賞できたことは嬉しく思います。昔から構想は練っていて、いつかチャレンジしたかった作品だったので、頑張って制作してきて良かったです。
■ベストインパクト賞:東京本校・下郡恵理さん『魔法少女にへんしん!』
普通の女の子がどんどん可愛い魔法少女に変身していく、3DCGアニメーション作品。「変身シーンを深く研究されていることが伺えて、魔法少女ものに対する愛を感じました。技術力の高さも感じ、弊社に欲しい人材です。」と下郡さんを称えました。
受賞者コメント:この作品は完全に自分の趣味で、好きなように制作したものだったので、こうして評価されたことは本当に驚いています。今後いよいよプロとして仕事をしていく上でも励みになりました。素敵な賞をありがとうございます。
■ベスト監督賞:安東虎太郎さん『いる』
いわくつきの物件に引っ越した、とある男の子の物語。視聴者の不安感をあおる演出がふんだんに盛り込まれており、物語が進んでいくにつれて恐怖感が増幅されていく実写映像作品です。審査員の原祐樹さんは「ホラーの定石をしっかり演出していて、いちコンテンツとして楽しめる作品でした」と演出を評価されました。
受賞者コメント:今年はコロナ禍で苦しい思いをした学生が多かったと思います。だからこそそれを糧に、同じ思いを抱えた仲間たちと、作品に全てをぶつけることができました。
プラチナスポンサーCCC賞:カルチュア・コンビニエンス・クラブのサービスにおける視点から企画を選出
■プラチナスポンサーCCC賞:田近実理さん『allertech』
飲食店のメニューの中で自分が何を食べられるのかがひと目でわかる消費者向けのアプリ『allernote』や、お店のメニューからアレルギー情報を記録するクラウドサービス『allercloud』などを企画。それら2つの事業を通じて、テクノロジーで食の壁をなくすサービス『allertech』がプラチナスポンサーCCC賞に選ばれました。食物アレルギーや宗教上の理由などで食べられないものがある人のために企画され、困っている人を助けたいという利他の心が審査員の目に止まりました。
受賞者コメント:私はアレルギーがあることがコンプレックスでした。ですがデジタルハリウッドには、自分の特徴をコンプレックスだと思わずにアイデンティティとして生きている人たちが多く、私も自分が持つ特徴を隠さずに生きれるようになりました。この企画を通じてたくさんの人からサポートいただいており、この場を借りて感謝を申し上げたいです。ありがとうございました。
学長賞:卒業生の中から2020年に活躍された方を選出
■株式会社グッドパッチ代表取締役 / CEO・土屋尚史さん
デジタルハリウッド大阪校卒業。デジタルハリウッドで出会ったメンバーと共に2011年にグッドパッチを創業し、2020年にはデザイン会社として初の東証マザーズに上場されました。
受賞者コメント:僕はデジタルハリウッドに入学して、人生が大きく変わった学生の中のひとりです。今後もさらに挑戦を続けていき、後輩に良い背中を見せ続けられるよう邁進していこうと思います。
■3DCG / VRアーティスト・伊東ケイスケさん
デジタルハリウッド東京本校卒業。CG特有の冷たさを感じさせない、やさしくあたたかな表現を追及されており、制作したアニメーションが2019年・2020年のヴェネチア国際映画祭にノミネートされました。
受賞者コメント:デジタルハリウッドで先生や仲間たちと切磋琢磨しながら、ショートアニメーションを制作した経験があったからこそ、現在はフリーランスのVRアーティストとして活動できているのだと思います。今後もより高みを目指して、新たなアニメーション制作に挑んでいきたいです。
■キャンプ女子株式会社代表・橋本華恋さん
ジーズアカデミー福岡校卒業。橋本さんは国内最大級の女性向けキャンプコミュニティ「キャンジョ」の運営や、多くの地方自治体とのアウトドアを通した地域活性化などを展開。、コロナ禍においてもアウトドアの楽しさを発信し、メディアから注目を集めています。
受賞者コメント:私たちの取り組みがデジタルハリウッドの耳に入り、学長賞を受賞できたことを大変嬉しく思います。これからもアウトドアを通じて楽しく幸せに過ごせる人が増えるように、皆さんをサポートしていきたいと思います。
病児保育を、てのひらに。園田正樹さんの『あずかるこちゃん。』がグランプリを受賞!
「今年も、この瞬間が来ました」。各賞の発表を終えて残すはグランプリのみとなり、司会の学長の声にも力が入っていました。インタラクティブ部門、グラフィック部門、サービス部門、研究・論文部門、映像部門など各部門で受賞された方の中から、ひとりのグランプリが選出されました。
栄えあるグランプリに輝いたのは、サービス部門ベストサービス賞を受賞した、園田正樹さんの『あずかるこちゃん』。
「デジタルハリウッドで一緒に研究をしてきた仲間たちや先生方、一緒に会社をやっているメンバーには本当に感謝しています。社会の真ん中に子ども、そしてその保護者がいる。そういった親子をみんなで支えていく社会にするために、邁進していこうと思います。」と今後の意気込みを語られました。
グランプリのトロフィーが授与された園田さんが晴れやかな表情を浮かべると、会場は盛大な拍手に包まれました。
イベントの最後を飾るのは、杉山学長から新入生に向けた激励のメッセージ。
「受賞されたすべての皆さん、本当におめでとうございます。この場には新入生の皆さんもいらっしゃいますが、本日はデジタルハリウッドの先輩が生み出した奇跡を見届けることができたのではないでしょうか。DIGITAL FRONTIER GRAND PRIXが始まって以来、26年間毎年こうした奇跡が起こります。今日ここから、ぜひあなたの夢を叶えてください。教授やスタッフ、ほかの学生たちは必ず力になってくれるはずです。ようこそ、デジタルハリウッドへ。」